■概 要
キャパシタの電解液として、水溶液は、電気化学的特性と安全性において、非水溶媒より遥かに優れています。問題は水溶液における狭い電位窓(水の分解電位)で、これまで2.2V程度が上限でした。そのため、水系キャパシタは3V以上の電位窓をもつ非水溶媒系キャパシタに太刀打ちできませんでした。
今回、クオルテックでは、飽和過塩素酸塩水溶液において、水溶液の電位窓を3V以上に広げることに世界で初めて成功しました。これにより、水溶液電解液を用いて、非水溶媒と同等の印加電圧が可能になり、水系キャパシタの発展に寄与することが期待されます。
■実験方法
グラファイト(日本黒鉛)にアセチレンブラック(Denka)とカーボンフェルト(TOYOBO)の少量を混ぜ、混合物を加圧して薄い板状の電極としました。セパレーターには紙あるいは親水性の高分子膜(日本バイリーン)を用いました。電解液はSSPAS、集電極にグラッシーカーボンを用い、電池ユニット(宝泉)に挿入してキャパシタを作製しました。印加電圧を最大で3.2Vに設定し、充放電試験(Bio-Logic VSP)を行いました。
1) 本研究で開発した電解液について、サイクリックボルタモグラム(CV)を測定しました(図1)。その結果、-1.6V~+1.6Vの範囲で、水の分解が起こらないことが明らかになりました。これは、水溶液としては世界で最も広い電位窓を意味します。
2) グラファイトを正、負極に用いたsymmetric capacitorを作成し、印加電圧3.2Vにおいて、充・放電を1万回繰り返しました(図2)。充放電曲線は安定しており、水の分解は観測されませんでした。
3) グラファイトに活性炭を添加するとエネルギー密度が増加します。40%活性炭では、エネルギー密度は18.7Wh/kg(全重量に対して)でした。この値はカーボンキャパシタとしてはほぼ最高値です。
4) 酸化バナジウムあるいは酸化鉄を添加するとエネルギー密度はさらに増加しました。図3において、エネルギー密度は28.7Wh/kgでした。この値はキャパシタの中では最高値に近い。結果はTable1に示します。
■今後の課題・計画
世界一広い電位窓を持つ水系電解液を用いて、世界一のキャパシタを開発していく。
具体的には、
1) 3分間で充電可能なスマートフォン用補助電源の開発
2) ハイブリッド車用の高速充放電が可能な大容量キャパシタの開発
■共同研究者
鷹尾康一朗様:東京工業大学准教授
浅沼徳子様:東海大学准教授
樽田誠一様:信州大学教授
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