EMCに関連したさまざまな技術情報をテクニカルノートとして、順次掲載していきます。設計・開発に携わる方以外にも、多くの皆様にご覧いただき何かの参考になれば幸いです。
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第三回概要:電磁シールド(1)の続きです。「筐体の接合部」についての解説となります。 筐体を構成する金属板同士の接触抵抗が小さくなるほど電磁波の漏洩は少なくなる一方で、インバータ電源のような主要コンポーネントとしてコイルを有する回路は、強い磁界を発生させるためコイルが接合部に近いほど電磁波の漏洩が多くなります。このような条件下でのEMC対策について解説していきます。
電磁シールド - ②
前回「電磁シールド-①」では、金属筐体によるシールドのポイントとして金属板によるシールドのメカニズムとその効果について説明しました。今回「電磁シールド-②」では筐体の接合部における電磁波の漏洩の特徴を説明します。
3.筐体接合部からの電磁波の漏洩
金属筐体の金属板の接合部はシールド上のウィークポイントの一つです。「電磁シールド-①」で説明しましたように、金属板としてのシールド効果は高いので(例えば、厚さ2 mm の鉄板であれば、10 kHz の周波数において約80 dB)、妨害波の漏洩を抑制することができますが、金属板同士の接合部ではインピーダンスが高くなるため、この部分を介して電磁波が漏洩しEMC 上の様々な問題を引き起こします。金属筐体における金属板の接合部は図6 に示すように、接合部を構成する二枚の金属板を伝送線路と見なし、その間に接触の状態に依存したアドミタンスYg が挿入された等価回路で表現することができます(1)。電気回路ではこのアドミタンスYg を「伝達アドミタンス」と呼んでいます。アドミタンスYg の逆数であるインピーダンスZg(=1/ Yg )は金属板同士の接触抵抗と考えると現象をイメージし易いことから、以降、これを接触インピーダンスと呼ぶことにします。接触抵抗が大き
いと接合部分を通して電波が漏れやすくなります。接触インピーダンスは低くければ低いほど、シールド性能は良くなります。インピーダンスZg はリアクタンス成分Xg を含み、次式のように示されます。
この等価回路ではシールド効果は次式で求められます。
Z0 は入射部における電界強度E(V/m)と磁界強度H(A/m)の比で、波動インピーダンスと呼ばれます。金属筐体の接合部におけるシールド効果はZg とZ0 に依存し、Zg は小さいほどシールド性能は高くなりますが、Z0 が小さいとシールド性能は低下します。
(a)断面図
(b)等価回路
© 2022 TOKIN EMC Engineering Co., Ltd.
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