二軸押出機の基礎シリーズでは装置の仕組みや特長、プロセス変数設定やその意味、後工程オプションを組み合わせた押出成形について解説していきます。
▼ こんな方におすすめです!
- なんとなく使っているけれど、もっと二軸押出機のことを理解したい
- 装置構成やパラメーターを変更したいけど、どうしたらよいか不安
- 二軸押出機をもっと使いこなしたい、もっと活用したい
今回はバレルやダイの温度設定について紹介します。
■ 温度設定の重要性
二軸混錬押出において適切に温度を制御することはとても重要な要素の一つで、以下の項目に影響を与えます。
- 材料の均一な溶融
温度が適切でないと、材料が均一に溶融せず、製品に不均一性が生じる可能性があります。 - 熱分解の防止
過度に高い温度では、材料が熱分解を起こし、物性の低下や危険物質の発生など望ましくない化学変化を引き起こすことがあります。 - 粘度の制御
温度は材料の粘度に大きな影響を与えます。適切な粘度を維持することで、押出プロセスが安定し、製品の品質が保たれます。 - 化学反応の最適化
特に複数の成分からなる材料の場合、各成分の相互作用を最適化する温度が必要です。これにより、材料の物理的特性や性能が最大化されます。
■ 材料の熱的特性の確認
材料成分の特性に関する情報を確認することで、温度設定の参考にすることができます。基本的な確認事項は次のとおりです。
- 材料が加熱されると何が起こるのか?
- 溶融点/ガラス転移は何度か?
- 材料が分解するのはどの温度か?
- 押出に最適な温度範囲はどこか?
これらの情報は、多くの場合、材料のサプライヤーから入手することができます。
一方で、複数の成分が配合された材料の場合は単一成分の場合と異なる熱的特性を示すため、配合された状態での材料の特性を確認、理解することが必要になります。
■ 複合材料の熱的特性の確認 熱分析
示差走査熱分析計(DSC)は、単一の成分と配合物の相変化を確認することができます。下の図は、医薬品有効成分(API)のイブプロフェンと水溶性ポリマーのSoluplus®(BASF、Ludwigshafen、 Germany)を、それぞれの単一成分と配合した材料のDSC測定を示しています。
Soluplusのガラス転移はおおよそ70℃、配合した材料の溶融点は73℃で、これが溶融体を得るための最低温度となります。イブプロフェンは145℃から分解を始めます。したがって、この配合材料の溶融混錬可能な範囲は70℃から145℃の間と推定することができます。
■ 複合材料の熱的特性の確認 レオロジー分析
温度スイープ測定機能を持つレオメーターで熱的特性の分析をすることで、より詳細な知見を得ることができます。
下の図はSoluplus単体(赤)およびイブプロフェンとの混合物(緑)の温度と粘度の関係を分析した結果と分析に用いたHAAKE MARS 60レオメーターです。
温度の上昇とともに粘度が低下していくことが示されています。
混合物の粘度曲線はポリマー単体よりも低温側にシフトしており、イブプロフェン(API)はSoluplus(ポリマー)に対して可塑化効果を与え、ポリマー単体の時よりも低い温度で粘度が下がることが分かります。
溶融混錬押出に適した粘度の範囲は600~10,000 Pa・sです。
このことから約70℃から105℃までの範囲が溶融混錬プロセスに適した温度範囲であると分かります。
■ まとめ
二軸混錬押出において材料の熱的特性を理解し、適切なプロセス温度設定をすることは、高品質なサンプルを得るだけでなく、安全性や効率といった点でも大きな効果があります。
熱分析装置やレオメーターで材料の分析を行うことで、材料に関する知見を深め、混錬押出のプロセス設定の最適化を効率よく実行することができます。
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