フォークリフトによる事故を防止するために
倉庫や工場など、荷を取り扱う作業に欠かせないフォークリフト。その利便性の一方で、フォークリフトによる労働災害は後を絶たず、数ヶ月の休業を要する重大災害や死亡災害につながるケースもあります。
災害の背景には、荷物を積んだ状態では前方が見えにくい、後進時に視界が狭くなる、急なハンドル操作で安定性を欠きやすいといったフォークリフト固有の特性があります。これらのリスクを低減し、安全な作業環境を確保するためには、事業者による適切な管理が必要となります。
どういった状況か
各地方労働基準監督署などは、フォークリフト事故件数・死亡事故件数を公表しています。例えば、佐賀労働基準監督署管内では、令和5年に15件(うち死亡災害1件)の休業4日以上の労働災害が発生しており、過去5年間で毎年12件以上の災害が継続して起きています。
また、常総労働基準監督署管内では、令和3年に発生した休業4日以上の労働災害389件のうち11件がフォークリフトによるものであり、労働災害全体の中でも無視できない割合を占めています。
発生した死亡災害の事例を見ると、「荷受け作業の補助をしていた作業者が、方向転換し後退してきたフォークリフトにひかれた」「後進中にマストが上部構造物に接触し、その反動で運転者が運転台から転落した」といった、後進時や周囲の確認不足が原因となるケースが報告されています。これらの災害の多くは、作業者との「接触防止措置」が適切に講じられていなかったことが原因とされています。
必要なアクション
労働災害を防止するために、事業者は法令等に基づき、以下の対策を確実に講じる必要があります。事業者、運転者双方が遵守すべきポイントを解説します。
1. 資格管理と教育の徹底
フォークリフトの運転は、最大荷重に応じた有資格者が行わなければなりません。運転者には資格証を必ず携帯させるようにしましょう。また、2025年問題をはじめとする、物流業界の人手不足により経験の浅い運転手が作業に従事していくことも考えられます。そのため、教育体制や、事故を防止する安全対策の意識を高めていく取り組みが重要となります。
- 最大荷重1t以上の場合:フォークリフト運転技能講習の修了
- 最大荷重1t未満の場合:フォークリフト運転特別教育の実施
2. 車両の点検と保守
フォークリフトを常に安全な状態で使用するため、法律で定められた点検・検査を必ず実施し、記録を保管しましょう。異常を発見した場合は、直ちに補修するなどの措置が必要です。
- 作業開始前点検:運転者がその日の作業を開始する前に行う
- 定期自主検査(月次):1ヶ月に1回、一定の項目について行う
- 特定自主検査(年次):1年に1回、専門の検査業者などによる詳細な検査を行う
3. 安全な作業環境の整備とルールの徹底
災害は車両だけでなく、作業環境やルールに起因することが多くあります。作業計画の作成、作業指揮者の配置、作業場所の安全対策(パレット等の管理など)を進める必要があります。
関連するリンク
- この記事は、厚生労働省および各労働基準監督署が公開している以下の資料を基に制作しています。
- 「フォークリフトによる災害を防止しましょう!」(佐賀労働基準監督署)
- 「フォークリフトによる労働災害を防止しましょう!」(常総労働基準監督署)
