熱中症対策は12月から!安全管理責任者のための半年間ロードマップ
~「準備不足」をなくし、2026年の夏を安全に乗り切るための半年計画~
「熱中症対策」というと、暑くなり始める5月や6月から考えれば良いと思っていませんか?しかし、近年求められる高度な安全管理や、改正労働安全衛生規則への対応、そして高年齢労働者への配慮を考えると、直前の準備では間に合わないケースが増えています。 特に、導入に時間を要するウェアラブルデバイスの検討や、新年度の予算確保を考慮すると、「冬(12月)」こそが、来年の安全を決めるスタートラインです。本記事では、2026年6月の熱中症シーズン本格化に向け、現場責任者がいつ・何をすべきかを可視化した「年間ロードマップ」を解説します。
「導入ロードマップ」の作成が必要な理由
熱中症対策において最も避けるべきは、「気温が上がってから慌てて対策を講じること」です。泥縄式の対応では、機材が間に合わなかったり、作業員への教育が徹底できず、事故につながるリスクが高まります。ロードマップ作成が必要な理由は、大きく以下の3点です。
- 「設備・機器」のリードタイム確保
近年注目される「バイタル管理ウェアラブル」や「高度なWBGT監視システム」は、選定から稟議、納品、そしてシステム設定までに数ヶ月を要することがあります。春先に動いては、稼働開始が夏本番に間に合わないリスクがあります。 - 「予算」と「ルール」の整合性
3月の年度末、4月の新年度に向けた予算取り(残予算の活用含む)を行うには、冬の間に現状調査と機器選定を終えている必要があります。また、来年4月施行の「高年齢者対策の努力義務化」に対応した就業規則の改定も、この時期の準備が不可欠です。 - 「暑熱順化」と「教育」の期間
機器を導入しても、現場の作業員が使いこなせなければ意味がありません。本格的な暑さが来る前に、試用期間を設け、体を暑さに慣らす(暑熱順化)期間を計画的に確保する必要があります。
ロードマップのアクション項目解説
添付のロードマップに基づき、2025年12月から2026年6月までに実施すべきアクションをフェーズごとに解説します。
【フェーズ1:計画・準備】(目安:12月~1月)
まずは現状を知り、体制を作る

- 責任者の選任と現状把握
誰が旗振り役になるかを決め、去年の夏のWBGT記録やヒヤリハット事例を洗い出します。「どこが危険だったか」を特定することがスタートです。 - 予算確保
必要な対策レベルに応じた予算を概算します。
【フェーズ2:方針策定・設備選定】(目安:2月~3月)
具体的な「モノ」と「ルール」を決める

- 機材の選定・発注
現場の課題に合わせ、WBGT測定器、空調服®、冷却ベスト、ウェアラブル端末などを選定します。特に人気製品は夏前に在庫切れになることもあるため、この時期の確保が鉄則です。 - 規則・手順の作成
「WBGT値が〇〇を超えたら作業を中断する」「高齢者は休憩を+1回増やす」といった具体的なルールを明文化します。
【フェーズ3:導入・教育・試運用】(目安:4月~5月)
現場に落とし込み、リハーサルを行う

- 教育の実施
全労働者に対し、熱中症の恐ろしさと新しいルール、機器の使い方を教育します。 - 健康診断と確認
4月の健診結果を踏まえ、熱中症リスクの高い従業員(基礎疾患がある方、高齢の方など)を把握し、個別の配慮事項を決定します。 - 暑熱順化
本格的に暑くなる前に、徐々に体を暑さに慣らしていきます。
【フェーズ4:本格運用・モニタリング】(目安:6月~)
確実に実行し、記録を残す

- モニタリングの徹底
WBGT値の測定と記録を毎日行います。ウェアラブル導入現場では、バイタルデータの常時監視を開始します。 - 異常時の対応
万が一、体調不良者が出た場合の救急搬送フローが機能するか、常に確認できる状態にします。
ロードマップの達成が、従業員と企業の未来を守る
このロードマップに沿って準備を進めることで、行き当たりばったりの対応ではなく、計画的な対策こそが、最悪の事態(死亡災害や重篤な後遺症)を防ぐことにつながります。また、2026年4月からの高年齢者対策の努力義務化を含め、企業としてやるべきことをやっているかどうかが、万が一の際の法的責任や社会的信用を左右します。まだ寒さを感じるこの時期だからこそ、冷静に、着実に。来年の夏、安全な現場を守るために、今月から「熱中症対策ロードマップ」を始動させましょう。
