サービスロボット部品委託製造ノウハウ特集

【関節・多自由度】部品の製造企業の選び方

サービスロボットのアームや膝、手のひらなどに、「関節・多自由度」部品は使用されます。その複雑性と高度な製造技術が必要となる委託製造企業の選定は、技術を持った信頼できるパートナーが必要となります。

このページでは、「関節・多自由度部品」に注目し、設計の考え方や素材選定について、検討すべきことをまとめています。企業選定時に特に注視すべき点についても、参考にしていただければ幸いです。

サービスロボットの「関節・多自由度」部品におけるタスクに応じた動作設計

サービスロボットの「関節・多自由度部品」は、人間のような滑らかな動作や複雑な作業を可能にします。これらの部品は、単に動くだけでなく、高精度な位置決め、高速応答、そして過酷な環境下での耐久性が求められます。製造には技術とノウハウが必要です。

特有の機能要件

「関節・多自由度」部品に特有の動きとして、角度を変えた動きを繰り返し行うことがあります。そのため、設計段階からのシミュレーション、試作における検証、そしてミクロン単位での加工精度が必要となる場合もあります。

アクチュエータ、センサー、減速機が一体となったユニットでは、各要素の連携と調整が重要です。要件は以下の点に注意して検討する必要があります。

  • 衝撃が加わった際の、力を逃がす構造
  • 部品を集約した際のサイズはどの程度か
  • 稼働範囲はどの程度か
  • 試作、負荷試験までに掛かる時間(複雑な構造であるため)

高集積化とユニットとしての完結性

タイヤやグリップなどは「先端の部品」として、力を伝える役割に特化します。「関節・多自由度」は、「動きの源泉」であり、動力源(モーター)、力の増幅(減速機)、位置・速度の検出(エンコーダ)、そしてそれらを支える構造(ハウジング、軸受)が、極めてコンパクトな空間に一体化されている必要があります。委託製造を依頼する場合、どの部品をどこまで外部に委託するのかについて、検討しておくことが大切です。

部品交換のしやすさ、メンテナンスを設計の段階で検討しておく必要があります。

利用シーン別に見る、素材選定の考え方

要件を整理した後には、素材や加工技術の選定を行います。ここでは、具体的な利用シーンを想定しながら、素材と表面処理の選定基準について解説します。

【ケース1】:生活支援・エンターテイメント(介護支援ロボット、コミュニケーションロボットの腕や首)

求められる特性

一般的には、人間の腕に近い6自由度(肩の上下・前後・回転、肘の曲げ伸ばし、手首の回転・曲げ)があれば人が行っている、多くのタスクに対応できます。動作音が小さく、生活空間に馴染むこと、衝突時の衝撃吸収性、挟み込み防止構造も設計に組み込む必要があります。

候補となる素材と処理の例

アルミニウム合金(A6061、A7075)、マグネシウム合金、エンジニアリングプラスチック(ガラス繊維強化PA、PC/ABS)などが挙げられます。加工・処理方法としては、樹脂射出成形(ハイサイクル、ガスアシスト)、ダイカスト、MIM(金属粉末射出成形)、静音軸受の採用、グリス選定による摩擦低減、ケーブル内装設計、樹脂カバーによる機構部の被覆などがあり、材料と用途に合わせて適切な選択を行うことが大切です。

【ケース2】:屋外・フィールド作業(農業用ロボット、探査ロボット、災害対応ロボットのアームや脚部)

求められる特性

IP等級に準拠した粉塵や水の侵入を防止する「防塵・防水性」。重いものを運ぶ場合には、高トルク・高負荷にも耐えることのできるかについても検討が必要です。

候補となる素材と処理の例

高張力鋼、ステンレス鋼(SUS304、SUS316)、チタン合金、耐候性アルミニウム合金などが、使用される素材として挙げられます。密閉構造設計、オイルシール・Oリングの採用、防水コネクタ、防錆塗装(エポキシ塗装、ウレタン塗装)、溶接構造、大型ギア加工、スプライン加工、モジュール設計による交換容易化などの加工、処理を適切に行うことが大切です。これによって、環境影響を受けやすい場所においても、期待した機能を発揮できます。

「関節・多自由度」部品の委託製造企業選定のポイント

高性能な関節・多自由度機構を実現するには、単に部品を作るだけでなく、ロボット全体の性能向上に貢献できるパートナー選びが重要です。

「動作精度」と「長期信頼性」を担保する超精密加工技術と検査・評価体制

関節部品は、μm(マイクロメートル)単位の寸法精度や幾何公差が要求されることがあり、これを実現するには高度な精密加工技術(研削、ホーニング、放電加工など)を擁しているか、確認しましょう。また、完成した関節ユニットの動作試験(可動範囲、バックラッシュ、繰り返し精度、耐久試験など)を、実際の使用条件に近い環境で実施できる設備とノウハウを併せ持つ企業を選定すると安心です。稼働回数が多い部分となるため、不良・故障の少ない製品を安定して供給できれば、長期的な自社の信頼につながります。

以下は、製造企業に対して事前に確認をしておきましょう。

  • 試作段階での対応力(設計の協力、試作する素材の柔軟性)
  • 設計変更や仕様調整への柔軟性
  • 試作からの量産移行ノウハウ
  • 部材調達から最終検査までの一貫体制

「小型軽量化」と「高トルク・高剛性」という相反する要求を両立させる提案力と実績

特に人との協働や移動を伴うサービスロボットでは、関節ユニットの小型、軽量化が商品電力削減といったエネルギー効率、運動性能、安全性に直結します。一方で、必要な作業を行うためには十分なトルクと、外力に対する剛性も求められます。これら相反する要求を両立させるには、材質選定(例:チタン合金、高張力アルミ、CFRPなどの軽量高強度材)、構造解析(FEM解析など)に基づいた最適設計、そして精密な部品加工と組立技術が必要になります。製造企業には、単に図面通りに作るだけでなく、例えば「この部分の肉厚をもう少し薄くしても強度計算上問題ないか」「この材質ならより軽量化できるが、コストと耐久性のバランスはどうか」といった、設計段階からの積極的な提案力が求められます。過去に同様の課題を解決した実績や、異種材料の組み合わせによる最適化提案ができる企業は、より高度な関節ユニット開発のパートナーとなり得ます。

委託企業選定のステップ

1

要件の明確化

ロボットの用途、動作環境、求められる精度や耐久性など、関節・多自由度部品に求める具体的な要件を洗い出し、言語化します。

2

技術力と実績の評価

候補企業の過去の製造実績、保有技術、設備、研究開発への投資などを総合的に評価し、貴社のニーズに合致するかを見極めます。

3

トータルサポート体制の確認

試作・量産対応力、コスト・納期管理、そして長期的なアフターサポート体制を重視し、信頼できるパートナーを選定しましょう。

【関節・多自由度】各業界特有の検討事項

部品の委託製造企業を検討するにあたり、業界ごとに確認する事項、選定のポイントが異なります。例えば、清掃ロボットの場合、人の動きを検知する機構や、経路をマッピングする機能などが必要となります。

警備・監視ロボット

高い耐久性、悪環境下での安定動作、そして静音性が求められます。精密な動作制御と信頼性が重要です。

屋内外問わず連続稼働するため、耐候性や防塵・防水性、衝撃吸収性のある部品が必須です。長期間の安定稼働とメンテナンス性を考慮した設計が求められます。

主な使用場所

  • 屋内・屋外施設
  • 広域巡回エリア
  • 暗所・悪天候下
  • 人混み・障害物環境

関連工程

  • 精密機械加工
  • 防水・防塵加工
  • 耐久性試験
  • 低摩擦コーティング
  • 振動・騒音解析

対象となるもの

  • カメラジンバル機構
  • センシングアーム
  • 歩行・走行部関節
  • ロボットアーム関節部

清掃ロボット

水や洗剤への耐性、軽量化、高い静音性、そして狭い場所での可動性が重視されます。

商業施設やオフィスでの使用が主で、衛生面と静音性が特に重要です。液体への耐性やメンテナンスのしやすさを考慮した部品選定が求められます。

主な使用場所

  • オフィスビル
  • 商業施設
  • 病院・介護施設
  • 工場・倉庫

関連工程

  • 防錆・耐薬品加工
  • 軽量化設計
  • 低騒音化対策
  • モジュール組立
  • シール加工

対象となるもの

  • ブラシ昇降機構
  • 吸引ノズル可動部
  • タンク開閉ヒンジ
  • モーター駆動部関節

その他サービスロボット

人との協調性や多様な作業に対応するための柔軟性、そして高い安全性が求められます。

介護・医療、物流、案内など、幅広い分野で導入が進んでいます。用途に応じたカスタマイズ性、人とのインタラクションを考慮した部品設計が肝要です。

主な使用場所

  • 医療・介護施設
  • 物流センター
  • ホテル・空港
  • 教育機関・研究施設

関連工程

  • 複合材料加工
  • 高精度サーボモジュール製造
  • センシング部品組込
  • 人間工学に基づいた設計
  • 柔軟性・軽量化技術

対象となるもの

  • 協働ロボットアーム関節
  • 案内ロボット顔部・首部
  • 移乗アシスト部機構
  • 配膳ロボットトレー昇降部

まとめ:最適なパートナーを見つけるために

サービスロボットの関節・多自由度部品の製造企業選定は、ロボットの性能、信頼性、そして市場競争力を大きく左右する戦略的な意思決定です。単に部品を製造するだけでなく、設計段階からの技術支援、試作から量産までの一貫した対応、そしてアフターサポートまでを含めた総合的なパートナーシップを築ける企業を見つけることが重要です。本記事でご紹介したポイントを参考に、貴社のロボット開発を成功に導く最適な製造パートナーを選定してください。