サービスロボット部品委託製造ノウハウ特集

【素材別】委託製造企業の選び方

サービスロボット部品の委託製造では、求められる機能や稼働環境に応じた素材選定が極めて重要です。本特集では、各素材の特性を深く掘り下げ、部品の用途に最適な素材選びのノウハウを提供いたします。

一般的な品質やコスト論に留まらず、素材ごとの具体的な特性と、それに対応できる委託製造企業の選び方を詳しく解説いたします。

金属素材の特性と選定ポイント

サービスロボットの骨格や駆動部に必要となる金属素材は、その強度、耐久性、導電性から多岐にわたる用途で活用されます。用途に応じて、コストと機能のバランスが取れた素材を選定することが重要です。

主要な金属素材とその特徴

ステンレス鋼は高い耐腐食性と強度を両立し、外装や機構部品に適しています。アルミニウム合金は鉄と比較し軽量(約1/3)でありながら、強度が高く、軽量化が求められる箇所に多用されます。熱伝導性や加工性にも優れており、切削や押出成形が容易な点も特徴で、強度と軽量化のバランスが求められる場所で特に重宝されます。

チタン合金は比強度が高く、軽量かつ高剛性が求められる先端ロボット部品などに用いられます。熱伝導率が他の金属比較すると低いため、放熱が必要な箇所には向かない場合があります。銅は全金属中で最高クラスの優れた導電性・熱伝導性を持ち、配線や放熱部品に不可欠です。耐腐食性にも優れており、長期使用にも適しています。一方で、比重が高くコストも比較的高めなため、使用箇所は性能要求に応じて限定的に選定されることが一般的です。安価な金属が必要な場合には、鉄やアルミニウム。軽い金属なら、アルミニウムやマグネシウム、チタンを使うなど。どの金属を、どこにどれだけ使用するかを決めるには、何を優先事項とするのかを事前に検討しておく必要があります。以下のような検討事項は、あらかじめ社内で協議しておきましょう。

  • 部品の強度や剛性の要件
  • 使用環境の耐食性・耐熱性
  • 軽量化の必要性
  • 加工性やコストバランス

金属素材の入手性について

石油資源に限らず、日本はあらゆる鉱物資源を輸入に頼っています。そのため、世界的な鉱物価格の上昇に大きな影響を受ける可能性があります。近年の例では、カーボンニュートラルに向けたEV増加、再生可能エネルギーの導入のために銅の需要が増加しており、銅価格が上昇しています。素材特有の調達事情もあることから、素材選定には注意が必要となります。

原材料供給リスクと、要件を満たす材料選定のバランスをうまくとりましょう。

樹脂素材の特性と選定ポイント

樹脂素材は軽量性、加工性、絶縁性、設計の自由度といった特徴から、サービスロボットの外装、内部構造、センサーハウジングなどに採用されます。

主要な樹脂素材とその特徴

ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)は、衝撃強度に優れ、加工がしやすいプラスチックです。剛性・耐衝撃性・耐熱性のバランスが良好で、筐体や外装部品などに多用されます。
ポリカーボネート(PC)は、透明性・耐衝撃性・耐熱性に非常に優れたプラスチックです。ガラスの代替素材としても使われるほどの強靱さがあり、電子部品のハウジングやレンズ、機械カバーなどに使用されます。

PLAはトウモロコシ由来のバイオマス樹脂です。3Dプリンターのフィラメント材料としても使用され、安価な材料であることもあり、試作改良を進める上で欠かせません。環境省HP「バイオプラスチックとは?」※2によると、PLAは生分解性があるため、 微生物の働きによりCO2と水にまで「代謝」されます。そのため、環境に優しい素材として注目されています。

樹脂素材の選定にあたり、以下を意識して検討を進めましょう。

  • 軽量化とコスト低減のバランス
  • 部品の形状と複雑性
  • 耐熱性、耐薬品性、耐候性
  • 表面処理や塗装の有無

委託製造における樹脂成形の注意点

樹脂部品の委託製造では、射出成形、切削加工、3Dプリンティングなど多様な成形技術が選択肢となります。委託先の金型設計能力や成形技術が、部品の品質とコストに直結します。

素材選びが他社との差別化に?

まだ生活になじみがあまりないサービスロボット。将来、高性能のロボットが生活に欠かせなくなると、次は、「環境に優しいロボット作り」が期待されるかもしれません。

バイオプラスチックを使用した「故障をしても土にかえるロボット」など、考え方次第では、他社との差別化につながる要素が、素材選びにはあるのではないでしょうか。

ゴム素材の特性と選定ポイント

ゴム素材はその柔軟性、弾性、密閉性、防振性から、サービスロボットの足回り、パッキン、緩衝材、グリップなど、特定の機能部品に不可欠な素材です。

主要なゴム素材とその特徴

シリコーンゴムは耐熱性、耐寒性、耐候性に優れ、食品・医療分野や屋外で使用されるロボットのパッキンやケーブル被覆に適しています。

EPDMは耐候性、耐オゾン性に優れ、屋外用ロボットの防水・防塵シールやクッション材に利用されます。ニトリルゴムは耐油性、耐摩耗性が特徴で、駆動部のオイルシールやキャスターのタイヤに適しています。最適なゴム選定には、以下の要素を考慮しましょう。

  • 求められる柔軟性や弾性
  • 使用環境の温度や薬品の影響
  • 耐摩耗性や耐久性
  • 圧縮永久ひずみの要件

委託製造におけるゴム成形の注意点

ゴム部品の委託製造では、圧縮成形や射出成形が一般的です。金型設計の精度や、素材の配合技術が、部品の性能や耐久性を大きく左右します。特に、複雑な形状や高い精度が求められる場合は、実績豊富な委託先を選びましょう。

複合素材の特性と選定ポイント

複合素材は、複数の異なる素材を組み合わせることで、単一素材では得られない高い性能(軽量性、高強度、高剛性、耐熱性など)を実現します。サービスロボットの高性能化に不可欠な選択肢です。

主要な複合素材とその特徴

内閣府HP「技術に関する施策及び新規研究開発事業の概要」※1によると、炭素繊維は軽い(鉄の約1/4倍)、強い(鉄の約10倍)、硬い(鉄の約7倍)、錆びない等の特徴をもつ素材」とされています。その炭素繊維と樹脂の複合材料が炭素繊維複合材料です。代表的なものには、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)があります。航空機の外装などに採用され、軽量化と運動性能が最重要視される部位に採用されます。

※1:https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/hyouka/haihu99/sanko1_35.pdf

ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)は、CFRPに比べて低コストながら、十分な機械強度・耐食性・電気絶縁性を備えており、産業用カバー、センサー筐体、車両外装パネルなど幅広い用途に対応しています。加工性も高く、射出成形やハンドレイアップなど多様な成形法が可能で、中量~大量生産にも適しています。ただし、軽量化性能や剛性面ではCFRPに劣るため、用途ごとの性能要件に合わせた選定が必要です。以下のような検討事項は、あらかじめ社内で協議しておきましょう。

  • 求められる比強度や比剛性
  • 耐疲労性や振動減衰性
  • 複雑な形状への対応可否
  • 成形コストと量産性

特殊素材の委託製造における注意点

CFRPは、特殊な加工と加工難度の高さ、金属に比べ高コストであることから、航空宇宙業界などに利用は限定されていました。しかし現在では、自動車や、レジャー用品、建築業界に至るまで、幅広い業界で扱われています。
サービスロボットは、軽量化によって稼働時間の延長や、胴体を支える部品の使用期間延長などが期待できます。これらを総合的に考慮して、必要とされる箇所に適宜複合材料を採用することが重要になります。

風を味方につけるGFRP/CFRP

経済産業省「風力発電設備の廃棄・リサイクルについて」※2によると、風車ブレードにはGFRPまたは、CFRPが複合材料として使用されている旨の記載があります。長さが数十メートルにも及ぶブレードを金属で作ると自重でたわみ、コストが大幅に上がってしまうためです。これによって、強風でも割れずに回転を続ける風車ができるのです。

※2:https://www.carbonfiber.gr.jp/aboutus/stat/index.html

まずは素材を理解することから

素材ごとの特性や加工の難易度を理解し、それに対応できる製造企業を選定することが重要です。軽量性・耐久性・コスト・加工性など、用途に応じて重視すべきポイントは異なります。将来的な拡張やバージョンアップも見据え、単なる製造委託にとどまらない“技術パートナー”として信頼できる企業を選びましょう。