サービスロボット部品委託製造ノウハウ特集

【タイヤ・走行部品関連】部品の製造企業の選び方

サービスロボットの安定した走行、移動には、タイヤや走行部品が欠かせません。その部品の要件設定や、素材の選定は、ロボットの耐久性(寿命)、悪路における信頼性を左右します。

このページでは、サービスロボットのタイヤ・走行部品に注目し、最適な委託製造企業を見つけるための選び方や、設計製造時に確認すべきポイントの詳細をまとめています。

サービスロボットの「タイヤ・走行関連」部品ににおけるタスクに応じた動作設計

サービスロボットにとってタイヤや走行部品は、人間でいう「足」に相当し、移動性能、安定性、そして安全性を直接的に決定づける非常に重要な要素です。床材や稼働環境に適したタイヤの選定は、摩擦係数、耐摩耗性、静音性など多岐にわたる特性を考慮する必要があります。

特有の機能要件と主要なタイヤの種類

ロボットが走行、移動する場所により、床材や稼働環境に適した部品は異なります。例えば、ビルや店舗、住宅を走行するロボットは低振動、静かであることが求められます。歩道を走る宅配ロボットなら、坂道でも走行できるような摩擦を持った設計をする必要があります。

走行場所に最適な部品を選択するには、走行部品の種類について知る必要があります。それぞれの特性を理解した上で、適材適所の利用をする必要があります。代表的なタイヤの種類は以下です。

  • ゴムタイヤ:汎用性が高くグリップ力と静音性に優れる。
  • ソリッドタイヤ:パンクせず重荷重に耐えるがクッション性低め。
  • 空気入りタイヤ:クッション性と路面追従性に優れ不整地向き。
  • キャスター・クローラー:特定の移動様式や積載量に対応。

タイヤだけではない、走行関連部品の重要性

タイヤ等の地面に接する部分だけでなく、車軸、ベアリング、サスペンション、駆動モーター、減速機といった走行部品全体が、ロボットの移動に関わります。これらは連携して機能し、滑らかな動き、正確な位置決め、そして耐久性を保証します。

サービスロボットの用途に応じたタイヤ・走行部品は、性能と安全性、活動範囲を左右します。

利用シーン別に見る、素材選定の考え方

要件を整理した後には、素材や加工技術の選定を行います。ここでは、具体的な利用シーンを想定しながら、素材と表面処理の選定基準について解説します。

【ケース1】:病院やオフィスの滑らかで滑りやすい床を静かに走る

求められる特性

高いグリップ力(特に乾いた床面)、床面を汚さない非マーキング性、優れた静粛性、適度なクッション性。

候補となる素材と処理の例

特殊配合のウレタンエラストマー、熱可塑性エラストマー(TPE)、非汚染性ゴム。タイヤ表面には、静粛性を高めるための細かなサイプ(溝)や特殊なトレッドパターンが施されることもあります。

【ケース2】:工場内の油が付着した床や、屋外の雨に濡れた路面を確実に捉える

求められる特性

耐油性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性。

候補となる素材と処理の例

ニトリルゴム(NBR)、特殊な合成ゴムコンパウンド。排水性を高めるための深い溝(グルーブ)や、エッジ効果を高めるサイプを多用したトレッドパターンが有効です。

「走行部品・タイヤ」部品の委託製造企業選定のポイント

製造を外部に委託する際、単に製造能力があるだけでなく、専門知識と、開発初期段階からの連携が可能な企業を選定することが大切です。ここでは、委託先を選定する際に確認すべき重要なチェックポイントをまとめました。

課題解決型の提案企業を探す

製造に関して、具体的な課題が挙がっている場合には、委託先候補の企業に対して、その課題をぶつけてみましょう。

例えば、「静粛性が求められるが、ある程度の段差走破性も欲しい」「狭い通路での小回りと、屋外での安定走行を両立させたい」といった課題に対して、オムニホイールや特殊サスペンション機構、あるいは特定のタイヤコンパウンドといった具体的な解決策を提示できるかといった点に注目します。以下のような点は確認しておきましょう。

  • 明確な見積もり内訳とコスト削減提案の有無。
  • 安定した納期厳守能力と緊急時の対応体制。
  • 材料調達の安定性と多様なサプライヤー。
  • ロットサイズに応じた柔軟な単価・納期設定。

安全性と信頼性を確保した設計にも、製造対応可能か

特に人と協働するロボットの場合、フェイルセーフ設計(ブレーキ機構の冗長化、タイヤパンク時にもある程度走行可能な構造)、以上摩耗や損傷を早期に検知する為の工夫が必要になる場合があります。設計が複雑化するため、 このような場合の対応実績があるのかどうかについても確認しておくと安心です。

委託企業選定のステップ

1

性能要件の明確化

サービスロボットの用途、稼働環境、求められる走行性能(速度、積載量、静音性など)を具体的に定義します。

2

委託先候補の絞り込み

定義した要件に基づき、専門技術、実績、品質管理体制、コスト競争力などを総合的に評価し、複数の委託先候補を選定します。

3

契約と連携体制構築

最終候補との交渉を通じて、製造契約、品質保証、納期、秘密保持などを確認し、長期的な協力体制を構築します。

【タイヤ・走行部品関連】各業界特有の検討事項

部品の委託製造企業を検討するにあたり、業界ごとに確認する事項、選定のポイントが異なります。例えば、清掃ロボットの場合、人の動きを検知する機構や、経路をマッピングする機能などが必要となります。

警備・監視ロボット

長時間稼働や悪天候に対応できる高耐久性、静音性、そして段差乗り越え能力が求められます。

屋内外の多様な環境下で信頼性の高い自律走行が求められるため、タイヤ・走行部品の選定は極めて重要です。

主な使用場所

  • オフィスビル
  • 工場敷地
  • 商業施設
  • 屋外巡回

関連工程

  • 耐摩耗性材料選定
  • 防塵・防水設計
  • 静音化対策
  • 耐荷重試験
  • 振動解析

対象となるもの

  • 全天候型タイヤ
  • 高耐久ベアリング
  • 防塵・防水モーター
  • サスペンションシステム

清掃ロボット

床材を傷つけない素材、静音性、段差対応、そして清掃薬剤への耐性が求められます。

商業施設や病院など、静かで衛生的な環境での使用が多く、床面への配慮と耐久性が重視されます。

主な使用場所

  • 商業施設
  • 病院・介護施設
  • ホテル
  • オフィス

関連工程

  • 非マーキング素材加工
  • 耐薬品性処理
  • 低摩擦設計
  • 静音設計
  • 段差乗り越え機構開発

対象となるもの

  • 軟質ゴムタイヤ
  • 特殊ウレタン車輪
  • 静音ギア
  • 高精度アクスル

多様なサービスロボット

ロボットの用途に応じて、耐荷重、速度、精密性、特定の環境耐性など、多様な要求に対応が必要です。

搬送、案内、接客など、各ロボットの機能と稼働環境に最適化された走行部品の選定が性能を左右します。

主な使用場所

  • 物流倉庫
  • 病院・医薬品搬送
  • レストラン・厨房
  • 小売店舗

関連工程

  • 高精度加工
  • 摩擦係数最適化
  • 衝撃吸収設計
  • 特定環境試験(温度、湿度、化学物質)
  • センシング部品との連携検証

対象となるもの

  • 耐荷重キャスター
  • 高速走行用ギア
  • 医療グレード素材部品
  • 高精度エンコーダ付きモーター

サービスロボット成功への道筋

サービスロボットの性能を最大限に引き出すためには、タイヤ・走行部品の選定とその製造委託先選びが重要です。本記事でご紹介した各ポイントを押さえ、技術力、品質管理、開発支援、コスト、納期、柔軟性、そしてアフターサービスを総合的に評価することで、貴社のサービスロボットプロジェクトに最適なパートナーを見つけることができるでしょう。