サファイアは、光学特性、機械特性、熱特性、耐薬品性など優れた特長を持った材料です。近年の結晶育成技術の成熟化により、高純度かつ300mmを超える大きな結晶を安定して得られるようになってきたことで、従来対応が困難であった用途での活躍の場が増えてきており、他材質からの置き換え・改善も進んできています。
サファイアの特性について
物理的 特性 |
化学組成 | α-Al2O3 (Corundum) |
格子定数 | a=0.47588nm、c=1.2992nm 密度=3.987g/cm3 融点=2040℃ |
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機械的 性質 |
曲げ強度 | 470MPa (c面 長軸が//a 軸の場合) 910MPa (a面 長軸が//c 軸の場合) |
硬度 | モース :9 (※ダイヤモンド=10 石英=7) ビッカース:1377(c面)、 1622(a面) |
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光学的 特性 |
透過特性 | 0.23~5.5μm(>50% 5mmt 光学グレード材) 0.15μm~(>50% 1mmt VUV グレード材) |
屈折率 | no=1.7680 ne=1.7598 (at 577nm) | |
熱的 特性 |
熱伝導性 | 115W/m・K (-120℃) 41W/m・K (0℃) 20W/m・K (220℃) 13W/m・K (500℃) |
化学的 特性 |
耐食性 | 塩酸、硫酸、硝酸など、ほとんどの酸やアルカリに侵されず |
電気的 特性 |
耐プラズマ性 | 長時間UV光を照射しても劣化なし |
電気的特性 | 電気絶縁性が高い、誘電率が安定、誘電損失が極めて低い |
サファイアの結晶系
サファイアの結晶系
酸化アルミニウムの単結晶で、高温安定型のコランダム構造をとるα-Al2O3を特にサファイアと呼んでおります。
自然界で結晶化したサファイアはその環境・不純物などによって結晶化する速度が速い方向と遅い方向の差が生じます。その結果、結晶構造を反映した晶癖 (habit) に囲まれることとになります。
X線技術が発達する前は、晶癖をもとに結晶構造を判断していたと言われています。
X線の回折現象を用いて方位・構造を特定することができるようになり、現在では結晶の方向、構造はミラー指数を用いることが多いです。
{11-20}、{0001}、{10-10}、{01-12}といった面方位の表現が一般的ですが、晶癖に由来するa面、c面、m面やr面といった呼び方も使われております。
サファイアの熱的特性
サファイアは室温でステンレスと同程度の高い熱伝導性をもつ酸化物です。
光を透過する特性や耐熱性、耐腐食性の特長と併せて、特異な放熱素材として広く使用されています。
特に低温での熱伝導率が非常に高いこともあり、極低温環境での放熱素材として優秀な材料です。
サファイアの機械的特性
サファイアはダイヤモンドの次に硬い鉱物として有名であり、その特長を活かして腕時計の風防や軸受けとして利用されています。砂などがかかる過酷な環境でも傷がつきにくいため、信頼性が求められる窓としても用いられています。
身近なところでは、腕時計の風防のほか、スマートフォンのカメラ窓などでサファイア製窓が用いられています。
サファイアの光学的特性
サファイアの透過特性
純度の高いサファイアは無色透明な結晶で、紫外から赤外まで連続して光を透過する性質を持ちます。特に赤外域で安定した透過特性を持つことから、赤外光を利用する装置や窓に有用です。
サファイアの誘電特性
サファイアは絶縁体であり、様々なドーパントを添加しても導電性を持たせることが難しい素材です。そのため絶縁性を活かした素材としての利用も多くみられます。
一方で、誘電損失係数(ε・tanδ)が非常に小さくかつ化学的にも安定なことから、マイクロ波素材としても有望な素材です。
サファイアの音波特性
サファイアは音速(vℓ)が高い材料のため、音が伝わりやすい材料の一つであり、音響インピーダンス値も高い値を示します。この特性を活かして超音波端子プローブや音響光学素子(AO素子)としても利用されています。
サファイアの化学的特性
サファイアは化学的に非常に安定で 酸・塩基溶液にほとんど侵されません。また プラズマ耐性も比較的高いことから、エッチング装置の窓や部品などに用いられています。しかし全く溶けないわけではなく、フッ酸(HF)など腐食性の高い溶液にわずかに侵されます。
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- 信光社のサファイア加工技術 (2025年01月20日)
- サファイアの特性について (2024年11月15日)
- サファイアの結晶生成技術で製造から最終研磨加工まで一貫対応で加工工程の短縮に貢献 (2024年10月24日)