本ブログシリーズでは、最適なドラッグデリバリーシステムのための製剤開発において注目すべき手法のホットメルトエクストルージョン(HME)と、二軸スクリューエクストルーダーについて解説します。
HMEの条件設定は、経験や勘だけで決めるものではありません。API、ポリマー、添加剤が加熱でどう変化し、どの温度で軟化・溶融し、どの温度から分解するのかを理解することで、押出温度、スクリュー速度、材料供給速度を合理的に決められます。
今回は、示差走査熱量測定、熱重量分析、レオロジー分析をHMEプロセス設計にフィードバックする考え方を紹介します。
▼こんな方におすすめです!
- 初期処方スクリーニングの評価項目を整理したい方
- HMEの条件をどう決めるか悩んでいる方
- 合理的かつ理論的にプロセス設計を進めたい方
■ HMEを行う前に確認すべき材料特性
HMEを成功させるには、各成分の熱的・物理的特性を把握する必要があります。
確認すべきポイントは、加熱時に何が起こるか、融点(Tm)またはガラス転移温度(Tg)は何度か、分解が始まる温度はどこか、押出に適した温度範囲はどこか、冷却時に再結晶化が起こるか、という点です。
これらは処方の成否だけでなく、装置への負荷、トルク、圧力、押出物の状態にも影響します。
■ DSCで見るガラス転移温度と融点
示差走査熱量測定(DSC)は、APIやポリマー、粉末ブレンドの相変化を把握するための基本手法です。
非晶質ポリマーではガラス転移温度、結晶性APIでは融点や再結晶化挙動を確認できます。
例えば、ポリマーのTgが70 ℃付近、APIの分解開始が145 ℃付近であれば、HMEで検討できる温度域はその間に設定されます。
単一成分だけでなくブレンドを測ることで、APIによる可塑化や相互作用の影響も評価できます。
■ TGAで熱安定性を確認する
熱重量分析(TGA)は、加熱時の重量変化を通じて水分、揮発成分、分解挙動を確認する方法です。
HMEでは材料が一定時間、熱とせん断を受けるため、分解温度に近い条件で処理することは避ける必要があります。
吸湿性ポリマーでは、含水量がプロセス条件や粘度に影響することもあります。
TGAの情報は、乾燥条件、バレル温度、ベントの必要性を判断する材料になります。
■ レオロジー分析で溶融粘度を探る
レオロジー分析ではガラス転移点や軟化点、融点、結晶化度など多くの情報を得られます。DSCと同様に固体分散体の状態を確認できますが、それに加え固体分散体にせん断力を与えて再結晶化の挙動を確認できます。さらに、貯蔵弾性率と損失弾性率、溶融粘度はHMEの加工性を決める重要な指標となります。
粘度が高すぎると十分な混合が難しくなり、過剰なトルクや圧力上昇につながります。
一方、粘度が低すぎると、押出物の形状保持が難しくなります。
材料や目的によっては異なるケースもありますが、一般的に混練と押出に適した粘度範囲は600~10,000 Pa・s、せん断速度は10~1,000 1/sの範囲とされています。
レオメーターによる温度スイープ測定は、実際のプロセス温度を絞り込む有効な手段の一つです。
■ まとめ
HMEの条件設定は、DSC、TGA、レオロジー分析を基に行うことで精度が高まります。熱安定性と溶融粘度を把握し、処方に適した温度・せん断条件へ反映することが重要です。
特にレオロジー分析は、HMEプロセス設計のための重な判断材料となります。
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