【令和7年法改正】高年齢労働者労災対策の努力義務化と今後の指針案──検討会報告書のポイント解説
厚生労働省は、令和7年5月に公布された「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)」の施行に向け、「高年齢労働者の労働災害防止対策に関する検討会報告書」を取りまとめました。
本報告書は、同改正法により事業者の努力義務とされた「高年齢労働者の心身の特性に配慮した措置」について、厚生労働大臣が公表する新たな「指針」の基礎となるものです。
1. 検討の背景と趣旨
少子高齢化の進行に伴い、全産業における高年齢労働者(60歳以上)の割合は増加傾向にあります。これに伴い、労働災害による死傷者数に占める高年齢労働者の割合も増加しており、対策の強化が喫緊の課題となっています。
こうした状況を踏まえ、令和8年4月施行予定の改正労働安全衛生法では、高年齢労働者の労働災害防止対策を事業者の努力義務として規定しました。検討会は、その実効性を確保するために国が策定すべき「指針」の内容や、普及啓発の方策について検討を行ったものです。
2. 高年齢労働者の労働災害発生状況
報告書では、対策の根拠として以下の労働災害発生状況が示されています。
災害発生率と年齢の相関
労働災害による死傷者数(休業4日以上)の割合を見ると、雇用者全体に占める60歳以上の割合は19.1%であるのに対し、死傷者数に占める割合は30.0%と高くなっています(令和6年時点)。
重篤化の傾向
高年齢労働者は、被災した場合の休業期間が長引く傾向にあります。休業1ヶ月以上の割合は、若年層と比較して高年齢層で高くなっており、身体機能の回復に時間を要することがデータから確認されています。
主な事故の型
事故の型別では、「転倒」および「墜落・転落」の割合が高く、これらで全体の約半数を占めています。これらの事故は、加齢に伴う平衡機能や筋力の低下が要因の一つと考えられています。
3. 大臣指針に盛り込むべき事項の概要
検討会では、事業者が取り組むべき事項として、既存の「エイジフレンドリーガイドライン」の構成を基本としつつ、以下の5項目を指針に盛り込むことが適当であると結論付けました。
- 安全衛生管理体制の確立等:経営トップによる方針表明や、高年齢労働者のリスクに着目したリスクアセスメントの実施。
- 職場環境の改善:身体機能の低下を補うための設備改善(照度の確保、段差の解消、補助装置の活用等)や作業方法の見直し。
- 高年齢労働者の健康や体力の状況の把握:健康診断の実施に加え、体力チェック等により客観的に体力を把握する機会の提供。
- 高年齢労働者の健康や体力の状況に応じた対応:個々の健康・体力状況に応じた業務配置や作業内容の調整。
- 安全衛生教育:高年齢労働者本人に対する身体機能の変化に関する教育、および管理者等への教育。
※各項目の具体的な実施方法については「エイジフレンドリーガイドライン」のページをご参照ください。
「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」パンフレット4ページ版が公開
4. 今後の取り組み
令和8年4月の改正労働安全衛生法施行により、高年齢労働者の労災防止対策が事業者の努力義務となります。本報告書はその指針の基礎となるもので、高年齢者の「転倒・転落災害の多さ」や「重篤化リスク」についてまとめられていました。事業者には、設備のバリアフリー化や体力チェックの実施など、ハード・ソフト両面での5つの対策が求められます。国による補助金等の支援策も活用し、計画的な環境整備を進めることが重要です。
高年齢労働者の労災対策コーナー
関連するリンク
- このページは、厚生労働省の公開資料を基に制作しています。
- 厚生労働省「令和6年 労働災害発生状況について」(https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei11/rousai-hassei/dl/s24-16.pdf)
- 厚生労働省「高年齢労働者の労働災害防止対策に関する検討会報告書の概要」(https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001623380.pdf)
- 厚生労働省「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)の概要」(https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/001497667.pdf)
