サービスロボット部品委託製造ノウハウ特集

【指・グリップ】部品の製造企業の選び方

サービスロボットの「できること」を左右する重要な要素の一つが「指・グリップ」部品です。物体を掴みんだり、操作する能力は、ロボットが私たちの身の回りの生活に溶け込む為には無くてはなりません。

このページでは、サービスロボットの指・グリップ部品の製造する際の考慮すべきことや、委託する際の企業選定のポイントを詳しく解説します。

サービスロボットの「指・グリップ」部品ににおけるタスクに応じた動作設計

「指・グリップ」部品は、人間が手を使いこなすように、多様な物体を安全かつ確実に把持し、繊細に操作することが求められます。これは、単なる機械的な動作だけでなく、対象物の形状、材質、重さ、そして周囲の環境を認識し、適切に対応する高度な機能が要求されることを意味します。

特有の機能要件

人間の手のように多様な形状や質感の物体を、確実に保持・操作できることが求められます。

特に、介護・医療・接客などの現場では、対象物が柔らかい・滑りやすい・壊れやすい場合も多く、接触面の素材特性(弾性・摩擦の大きさ)や制御精度(圧力センサーやトルクセンサーの内蔵)が必要になる場合があります。以下のような項目を整理して考える必要があります。

  • 人間の指のような、多関節構造と柔軟性はどの程度とするか
  • 指の腹や掌に相当する部分に、適度な弾性を持つ素材を採用する必要が無いか
  • 大きな箱を掴む際の、指の開き角度調整できる機構か
  • センサーや配線を組み込めるスペースがあるか?

対象物の材質・表面状態に応じた精密な力加減

表面的な部分だけではなく、機械的な構造についても検討する必要があります。例えば、一度掴んだ対象物を、リンク機構等の工夫によって指をロックし、軽い力で長時間の保持を可能にすることなどが挙げられます。これによって、消費電力の削減につながることもあります。

指・グリップ部品は、単なる機構部品ではなく、ロボットが外界とを接続する役割を担い、その性能がロボットの信頼性と直結します。

利用シーン別に見る、素材選定の考え方

要件を整理した後には、素材や加工技術の選定を行います。ここでは、具体的な利用シーンを想定しながら、素材と表面処理の選定基準について解説します。

【ケース1】:焼きたてのパンや熟した果物を掴む指

求められる特性

高い柔軟性、低い反発弾性、対象物を傷つけない非粘着性、食品衛生法の適合などが挙げられます。

候補となる素材と処理の例

食品グレード(食品に直接触れることのできる素材)のシリコーンゴム(硬度調整可能)、熱可塑性エラストマー(TPE)、ゲル素材。これらの素材を使用することで、対象物の形状に滑らかに追従し、均一な圧力で包み込むように掴むことが可能になります。

【ケース2】:金属製のギアや電子基板を精密に扱う指

求められる特性

高い剛性、耐摩耗性、寸法安定性、場合によっては静電気対策(導電性・帯電防止性)。

候補となる素材と処理の例

ポリアセタール(POM)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などのエンジニアリングプラスチック、アルミニウム合金(A5052など表面処理を施したもの)、ステンレス鋼(SUS303、SUS304など)が挙げられます。

「指・グリップ」部品の委託製造企業選定のポイント

製造を外部に委託する際、単に製造能力があるだけでなく、専門知識と、開発初期段階からの連携が可能な企業を選定することが大切です。ここでは、委託先を選定する際に確認すべき重要なチェックポイントをまとめました。

指・グリップ固有の課題への対応力

指・グリップ部品には、異なる形状・硬度・重量を持つ対象物に柔軟に対応するための多自由度構造や、ソフトマテリアルとの複合化技術(例:エラストマー×金属)が求められます。例えば、人との接触を想定する現場では、可動部にシリコンやTPUなどのソフトカバーを一体成形する設計が必要なことも多く、こうした複雑形状の多材料成形・接合に関するノウハウの有無は、委託企業を選ぶ上での見るべきポイントになります。

特に、以下のような点は、事前に確認しておきましょう。どのような形状を想定しているかなど、ある程度具体的な形で問い合わせをすると、自社の製造に最適な企業か判断できます。

  • サービスロボット向け指・グリップ部品の製造実績
  • 微細加工や異種素材複合化における技術力
  • 設計・開発段階からの具体的な技術提案力
  • 製造プロセス全体にわたる品質管理体制の有無

アフターサポートとパートナーシップ

指・グリップ部品は、ロボットの運用中に摩耗や損傷が生じやすい部分でもあります。そのため、製造後の補給部品の供給体制や、トラブル発生時の迅速なアフターサポートは非常に重要です。また、長期的な視点では、製造プロセスの改善提案やコストダウンに向けた協力体制を構築できるかどうかも見極めるべきポイントです。単発の取引ではなく、継続的なパートナーシップを築ける信頼性の高い企業を選定することが、安定したロボット開発・運用に繋がります。

委託企業選定のステップ

1

要件の明確化と技術課題の特定

ロボットの用途、把持対象、使用環境を具体的に定義し、指・グリップに求められる機能と、実現における技術的課題を特定します。

2

専門性と実績のある候補企業の選定

指・グリップ部品の製造実績、特に精密加工や多素材複合化の技術力を持つ企業を複数ピックアップし、提案力や開発支援体制を評価します。

3

試作・評価を通じたパートナーシップ構築

試作段階から密に連携し、評価と改善を繰り返すことで、技術的な課題を解決し、長期的な信頼関係を築けるパートナーを選定します。

【指・グリップ】各業界特有の検討事項

部品の委託製造企業を検討するにあたり、業界ごとに確認する事項、選定のポイントが異なります。例えば、清掃ロボットの場合、人の動きを検知する機構や、経路をマッピングする機能などが必要となります。

警備・監視ロボット

不審物の把持や証拠保全、ドアの開閉など、環境認識と精密な操作が求められます。

警備・監視ロボットの指・グリップ部品は、静音性、耐久性、そして暗所や屋外などの多様な環境下での確実な把持性能が求められます。特に、証拠品の回収やドアノブ操作といった具体的な作業への対応力が重要です。

主な使用場所

  • 施設内
  • 屋外
  • イベント会場
  • 重要設備周辺

関連工程

  • 精密部品加工
  • 静音化設計
  • 耐環境性能評価
  • 触覚・力覚センサー組込
  • セキュアな把持機構開発

対象となるもの

  • 証拠品(小型・不定形)
  • ドアノブ
  • ボタン
  • 配線・ケーブル

清掃ロボット

ゴミの回収、拭き掃除、ブラシ交換など、効率性と耐久性、耐環境性が重視されます。

清掃ロボットの指・グリップ部品は、多様なゴミの形状への対応力、水や洗剤に耐える耐薬品性、そして高頻度な使用に耐えうる耐久性が不可欠です。交換部品の容易さや、メンテナンス性を考慮した設計も選定の重要なポイントとなります。

主な使用場所

  • オフィスビル
  • 商業施設
  • 工場
  • 病院

関連工程

  • 耐水・耐薬品性加工
  • 高耐久性素材選定
  • 異物混入対策設計
  • 自動交換機構部品製造
  • 容易なメンテナンス設計

対象となるもの

  • 小型ゴミ・埃
  • 液体(洗剤など)
  • 交換用ブラシ・モップ
  • フィルター

その他のサービスロボット

人との接触や多様な物体への対応が求められ、安全性と柔軟性、衛生面が重視されます。

介護、物流、医療支援など、幅広いサービスロボットの指・グリップは、把持対象の多様性、人との接触時の安全性、そして衛生面への配慮が特に重要です。柔軟性のある素材や、洗浄・消毒が容易な設計が求められ、ソフトロボティクス技術の活用も検討されます。

主な使用場所

  • 介護施設
  • 病院
  • 倉庫・物流センター
  • 飲食店・家庭

関連工程

  • 生体適合性素材選定
  • ソフトロボティクス技術
  • 衛生設計・滅菌対応
  • 多様な形状への把持対応
  • 人との共存安全設計

対象となるもの

  • 食事・飲料容器
  • 日用品(衣類、書籍など)
  • 医療器具・医薬品
  • 荷物・物品(物流)

「指・グリップ」部品製造企業の選び方:まとめ

サービスロボットの「指・グリップ」部品は、単なる部品ではなく、ロボットの機能を左右する心臓部とも言えます。最適な製造企業を選定するためには、単にコストや納期だけでなく、指・グリップ部品に特化した高度な専門知識、多様な素材と加工技術への対応力、そして設計・開発段階からの密な連携と提案力を持つパートナーを見つけることが重要です。本特集でご紹介したポイントを踏まえ、貴社のサービスロボット開発を成功に導く最適な製造企業を選定してください。