サービスロボット部品委託製造ノウハウ特集

サービスロボットについて【業界別・ロボットの形状別】

サービスロボットは、現代社会が抱える様々な課題解決の鍵として、その存在感を増しています。工場などの特定の環境で働く産業用ロボットとは異なり、私たちの日常生活やビジネスの現場で、より人間に近い形で多様なサービスを提供するのが特徴です。その活用範囲は広がり続けており、効率化、省力化、安全性向上に貢献しています。

この記事では、サービスロボットの現状を【業界別】と【ロボットの形状別】という2つの視点から深く掘り下げて解説します。それぞれの分野でどのような役割を担い、どのような特徴を持つロボットが活躍しているのか、具体的な例を交えながらご紹介します。

サービスロボットとは?

国立研究開発法人科学技術振興機構 研究開発戦略センター「研究開発の俯瞰報告書」※1によると、「サービスロボットとは、汎用的な産業用ロボット以外のロボット全般を指すことが多く、明確に定義されているものではない」とされています。
当特集では、工場内で溶接等を行う産業用ロボット以外を除いた、人間を支援したり、特定のサービスを提供したりするロボットのことを、サービスロボットとして紹介しています。

※1:https://www.jst.go.jp/crds/pdf/2024/FR/CRDS-FY2024-FR-03/CRDS-FY2024-FR-03_20208.pdf

多岐にわたるサービスロボットの役割

サービスロボットの役割は非常に多岐にわたります。例えば、病院で患者を目的地まで案内する案内ロボットや、レストランで料理を運ぶ配膳ロボット、オフィスや商業施設を夜間に自律的に作業する警備/監視ロボット、清掃ロボットなどが挙げられます。これらは単に作業を自動化するだけでなく、人間がより専門的な業務に集中できる環境を作り出す役割も担います。

また、高齢者施設での見守りやリハビリ支援、家庭での話し相手になるコミュニケーションロボットなど、人とのコミュニケーションを重視する分野でも活躍が進んでいます。これらのは、特に日本において深刻な人手不足の解消や、人々の生活の質向上に貢献することが期待されています。以下のような役割において、サービスロボットが活躍します。

  • 病院や施設での案内・搬送支援
  • レストランや店舗での配膳・接客業務
  • オフィスや商業施設での清掃・警備
  • 家庭での見守り・コミュニケーション

サービスロボットの市場規模

世界のサービスロボット市場は急速に成長しています。総務省 令和6年版白書によると、2025年から2030年までに、約1.5倍の成長が見込まれています。※2、※3

サービス業でも、警備、清掃、介護などの分野において続々とロボットが発表、導入されており、この流れは今後も加速すると考えられます。このような変化が引き起こす課題としては、サービスロボットの供給不足、多品種少量生産が必要な部品の調達等が挙げられます。そのような背景から、本特集は生まれました。

※2:Statista「Statista Market Insights」 https://www.statista.com/outlook/tmo/robotics/worldwide
※3:総務省ホームページ https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r06/html/nd132200.html

サービスロボットの進化は、センサー、AI、バッテリー技術の進歩が基盤となっており、その性能と信頼性を高めることで、社会実装が加速しています。

形状別に見るサービスロボットの特徴

サービスロボットは、その用途や稼働環境に応じて様々な形状があります。それぞれの形状には得意なこと、苦手なことがありるため使い分けが必要になります。ここでは、主要な形状とその特徴について解説します。

多様な移動機構と作業形態

サービスロボットの移動機構は、その活動範囲と環境適応性に大きく影響します。例えば、平坦な屋内での移動には車輪型が一般的で、高速かつ効率的な移動が可能です。具体例としては、「セコム株式会社」の巡回警備や点検業務を行うセキュリティロボット「cocobo」※4などがあります。

※4:https://www.secom.co.jp/

一方、不整地や段差が多い場所では、クローラ型や四足歩行型が適しており、安定した走行や踏破能力を発揮します。空中での作業にはドローンが活用され、広範囲を効率的にカバーします。また、作業形態も多様です。アメリカや中国を中心に開発が進んでいる人型ロボットは、人間と自然なコミュニケーションを取りやすく、受付や案内業務、家事などに適しています。据え置き型は特定の場所で継続的なサービス(例えば監視や情報提供)を提供するのに適しており、安定性が強みとなります。
これらの形状は、それぞれ特定の役割や環境に特化して設計されています。

  • 車輪型: 屋内移動に特化し、高速かつ静音性に優れる。
  • クローラ型: 不整地や段差に強く、屋外や建設現場などで活躍。
  • 人型: 人間との自然なインタラクションや複雑な動作が可能。
  • アーム型: 精密作業や重量物の運搬、把持動作に優れる。

環境適応と設計のポイント

ロボットの形状選定においては、使用される環境(屋内・屋外、広さ、段差の有無など)と、求められる機能(運搬、清掃、対話、監視など)を総合的に考慮することが重要です。例えば、狭い空間を移動するなら小型の移動型、広範囲を効率的に巡回するならドローン型が適しています。

サービスロボットが解決する課題と未来への期待

サービスロボットの導入は、単なる自動化に留まらず、社会が抱える多くの課題に対する具体的な解決策として期待されています。特に人手不足や高齢化といった構造的な問題に対し、上手く活用することが重要になります。

具体的な課題解決への貢献

サービスロボットは、労働集約型産業での人手不足を補うだけでなく、危険を伴う作業や単調な繰り返し作業を代替することで、労働環境の改善と従業員の安全確保に貢献します。例えば、夜間の警備や高所での清掃など、人間が行うにはリスクが高い作業をロボットが担うことで、事故のリスクを低減します。

また、人為的なミスを減らし、作業品質を均一化することで、サービスの質の向上にも寄与します。24時間稼働可能なロボットは、事業の継続性を高め、生産性の向上に大きく貢献することが見込まれます。これにより、企業は以下のような、より効率的な運営が可能となり、競争力の強化につながると推測されます。

  • 人手不足の解消と労働コストの最適化
  • 作業品質の均一化と生産性の向上
  • 危険な作業からの従業員の解放と安全性向上
  • 24時間体制でのサービス提供による事業継続性確保

サービスロボットの導入を進めた企業

サービスロボットの導入を飲食業界で大規模に進めた企業として、「株式会社すかいらーくホールディングス」があります。同社は、顧客満足度の向上、働きやすい職場環境を提供するため、2022年末の時点で、約2,100店に3000台の料理配膳ロボットを導入※5しています。導入効果として、「片付け完了時間削減」、「歩行数減少」など※5があったそうです。

サービスロボットの開発・製造企業の視点では、顧客の課題をどのように解決すれば、自社の製品導入を大規模に進めてもらえるのか、参考にできます。

※5:株式会社すかいらーくホールディングスHP「約 2,100 店に 3,000 台のロボット導入完了」PDF参照

ロボット導入による「人財」の価値向上

サービスロボットが単純作業や定型業務を担うことで、従業員はより専門的なスキルを磨いたり、顧客との質の高いコミュニケーションに時間を費やしたりすることが可能になります。これにより、個々の「人財」が持つ潜在能力を最大限に引き出し、組織全体の生産性と創造性を高めることにつながるでしょう。

サービスロボットの可能性を最大限に引き出すために

サービスロボットは、現代社会の多様なニーズに応える強力なツールであり、今後もその進化と普及は加速していくことでしょう。介護・医療、物流、清掃、案内など、様々な分野での活躍は、人々の生活の質を高め、社会全体の生産性を向上させる大きな可能性を秘めています。導入を検討する際は、自社の具体的な課題や環境に最適なロボットの形状や機能を明確にすることが重要です。将来的な拡張性や、人間との協調性の確保も視野に入れることで、サービスロボットの真の価値を最大限に引き出し、持続可能な社会の実現に貢献できると私たちは考えます。