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コラム

被験生物としてのカクレクマノミの有効性

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国内では海水魚を用いた環境リスクアセスメントや毒性評価に、マダイやヒラメ、シロギス等の食用の魚種が多く使われてきました。

 

一方、うみの株式会社では

カクレクマノミを用いた試験をご提案しています。

 

 【 既存の淡水生物を使用した毒性試験の問題点 】

・排水を海域に放流する事業所もある。

・川に排水したものも、最終的には海に流れ着く。

・淡水と海水では物質の挙動が異なる。

 

日本では、一般に淡水に生息する生物を用いていますが、欧州や米国では海水生物のテストガイドラインが整備され、公定法とされています。 

その流れで、国内でも海水魚における特定化学物質の基準値の策定が進められています。さらに、国際的な事業では海水生物による毒性試験要する場合も少なくありません。

 

【 試験魚に求められる要件 】

環境リスクを評価するための指標魚には、以下の要件が求められます。

  • 成長段階の揃った未成熟個体
  • 国内の沿岸部に生息し大きな回遊性を示さない
  • 養殖対象種である

以上の点から、マダイやヒラメ等が指標魚の候補種として挙げられております。

 また、実際に試験をするにあたり、利便性が高く、不確定要素が少ないことが重要です。

  • いつでも大量に手に入る
  • 遺伝的に均一な集団である
  • 低温域と高温域それぞれで指標となる生物が必要
  • 過去データが豊富

こうした条件を満たす海水魚となると実際にはなかなか見当たらないのが問題点として考えられています。

 

【 カクレクマノミの特徴 】

・カクレクマノミ( Amphiprion ocellaris )

・スズキ目スズメダイ科クマノミ亜科(海水魚)

・体長:最大10㎝程度

・産卵数:数百産卵/回 ※ 条件が整えば繰り返し産卵しつづけることができる

・生息域:国内では奄美大島以南、国外では西部太平洋からオーストラリア、インド洋

最も大きい個体がメス、2番目がオス、それ以外は未成熟

 

最大の特徴は、性転換が後天的に環境に依存してしている点です。群の中で最も大きな個体がメス、次に大きいものが

オス、残りの個体は未成熟のままであるとされています。

 

 

 これらの特徴を毒性試験の指標魚としてみた場合、以下の様になります。

  • 養殖ものでは、日齢およびサイズまで指定可能
  • 回遊性を示さず、国内沿岸部に生息
  • 遺伝的に均一な大量の試験サンプルが一年を通じて手に入る
  • 未成熟の期間が長いため、長期の慢性毒性試験にも適している
  • 生息域が広く、海外にも分布→地域間のデータ共有が可能
  • 最大体長が大きくないため、コンパクトな試験設備で実施可能

以上の点より、カクレクマノミは非常に優れた性質を持った試験魚であると言えます。

 

うみの株式会社は、2005年にカクレクマノミの養殖、販売を開始し、現在では国内有数のカクレクマノミ生産業者となりました。

この間に培ったノウハウをもとに、カクレクマノミを使用した各種試験の受託サービスを展開し、多くのお客様からご相談を受けております。

 

【 有用性の裏付け 】

カクレクマノミを用いた毒性試験の実績はまだほとんどありませんが、マダイやヒラメと同等に使用できることはすでに検証されています( 参考文献1 )。

マダイ、ヒラメと比較して、カクレクマノミはホウ素、アンモニアに対しては概ね同程度の感受性を示し、銅に対してはカクレクマノミのみLC50( 96時間半致死濃度 )の算出に至った、とされています。

 

弊社にてカクレクマノミの高濃度銅イオン曝露における急性毒性試験を実施したところ、体長に比例して耐性が増す(感受性が下がる)傾向にあることが確認されました。

 

毒性試験以外にも、カクレクマノミにおける機能性成分の有効性評価も実施され始めており( 参考文献2 )、今後試験データの蓄積が進むことが期待されます。

 

 【 参考文献 】

1.古田岳志, 菊池弘太郎, 岩田仲弘 (2009):海産魚仔魚を対象とした長期毒性試験におけるカクレクマノミの有効性 (財団法人電力中央研究所 研究報告:V08009)

 

2.Ramanadevi V., Muthazhagan K., Ajithkumar T., Thangaraj M., (2013):The Efficacy of Dietary Yeast Mannan Oligo Saccharide on Growth and Survival Rate in Amphiprion ocellaris Fingerlings:European Journal of Biotechnology and Bioscience 2013; 1 (2): 12-15

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