コンピュータ・オン・モジュール(COM)とは、どのようなもので、どのような種類がありますか?また、選定のポイントは?

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 / 2023年06月14日 / 

回答

コンピュータ・オン・モジュール(COM)は、プロセッサやメモリ、ペリフェラル インタフェースなどコンピュータに必須の機能を小型の基板に実装し、動作検証された状態で提供されるモジュールで、システム・オン・モジュール(SoM)とも呼ばれます。 コンピュータ・オン・モジュールはキャリアボードに搭載して使われ、実際の製品に必要な追加機能やインタフェースはキャリアボードに実装します。 このモジュラー設計により、開発者は複雑で時間のかかるプロセッサ周りの設計をしなくて済み、実際の製品に必要な追加機能を独自の形状のキャリアボードに実装することに注力できるため、開発期間を短縮しコストを削減することができます。 標準のフォームファクタとしては、標準化組織の PICMG が策定した COM Express や COM-HPC、SGET が策定した Qseven や SMARC などがあります。

 

COM Express は、汎用のエッジ、および組込みコンピュータ向けに PICMG により策定された標準フォームファクタのコンピュータ・オン・モジュール規格で、サイズは Basic(125x95 mm)の他、Compact(95x95mm)、Mini(84x55mm)、Extended(155x110mm)の4種類が定義されています。

ピン配置は複数定義されていますが、最近の主流は、グラフィックスを搭載したクライアント向けの Type6、ヘッドレスで高性能なサーバ向けの Type7、そしてクレジットカード サイズのMiniで採用されている Type10 です。

 

COM-HPC は、ハイパフォーマンスのエッジ、および組込みコンピュータ向けに PICMG により策定された標準フォームファクタのコンピュータ・オン・モジュール規格で、ヘッドレスで高性能の Server タイプと、グラフィックスを搭載した Client タイプがあります。 サイズはClient用として Size A(95x120mm)、Size B(120x120mm)、Size C(160x120mm)の3種類、Server用に Size D(160x160mm)、Size E(200x160mm)の2種類が定義されています。 さらに、ほぼクレジットカード サイズの COM-HPC Mini(95x60mm)規格も加わる予定で、より幅広いアプリケーションに対応できるようになります。

Server タイプは、サーバ・オン・モジュール(SOM)とも呼ばれ、 COM Express Type 7 の上位機種に位置付けられ、一方のClient タイプは、COM Express Type 6 の上位機種と位置付けられます。

 

SMARC は、低消費電力の小型組込み機器向けに SGET により策定された標準フォームファクタのコンピュータ・オン・モジュール規格で、Armベースのプロセッサを搭載することを意識して作られていますが、低消費電力のx86プロセッサを搭載することもできます。 2種類のサイズが定義されていますが、主流は 82x50mmです。

 

Qseven は、低消費電力の小型組込み機器向けに SGET により策定された標準フォームファクタのコンピュータ・オン・モジュール規格で、Armプロセッサの他、x86プロセッサも実装することができます。 2種類のサイズが定義されていますが、主流は 70x70mmです。

 

コンピュータ・オン・モジュールを選定する際の注意点は、必要な機能・性能からプロセッサを選定し、最適なコンピュータ・オン・モジュールのフォームファクタを決定します。 実際のモジュール選定をおこなう際に注意しなければならない主なポイントは、次の項目です。

・ 品質とサポート体制: コンピュータ・オン・モジュールは製品に組み込んで使われるため、品質問題が起きた時にはシステムの停止や保守などダメージは甚大です。 表面的な価格に気を取られることなく、導入から運用まで長期的なライフサイクルを見据えて高品質の製品を選定することが肝要です。 また、ドキュメントなど技術資料が充実していることと共に、さまざまな問題に対してのサポート体制も重要です。

・ 供給性と継続性: コンピュータ・オン・モジュールは長期間使われる製品に組み込まれることが多いため、保守を考慮して長期的に安定して供給されることが重要です。 また、製品の終息時でも後継機種が期待できることも、ベンダーや製品を選定するうえでのポイントになります。

・ エコシステムとパートナー: コンピュータ・オン・モジュールを使った製品を迅速に、そしてスムーズに開発するためには、開発用のキャリアボードや冷却システム、ボード・サポート・パッケージ(BSP)やOSなどのソフトウェアなどの、エコシステムが重要です。 また、プロセッサや OS、あるいはインテグレーションなど、パートナーベンダーとの協力体制についても確認する必要があります。

 

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@engineer