図面からの情報抽出や変換を自動化して 設計・製造現場の業務効率化を促進 現場で扱えるAIで、属人化しやすい図面検索の悩みも解消

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 / 2022年05月02日 / 

製造業では、高齢化や人材不足といった問題に対応するため、業務効率化や自動化への取り組みが必須である。しかし、多くの設計・製造の現場では過去図面の検索など、いわゆる非生産的な作業に大きな時間を割いているという課題がある。これを解消するのが、現場の担当者自身で簡単に扱えるAI 図面検索サービスの「LearningBook®」だ。

 

▶図面の取り扱いがアナログな現場も多い

 

労働人口が減少する現在、製造業は、高齢化や人材不足といった課題を抱えている。しかしながら設計・製造業務においては、ますますの期間短縮やコストダウンが求められており、作業の効率化や自動化への取り組みが必須となってきている。製造業の機械設計においては、ある製品をもとに派生機種を設計したり、過去に設計した部品を流用したりといったことが頻繁に行われる。このような過去の設計にもとづいて再構築して行う製図作業が、設計作業全体のうちの多くの割合を占めるとも言われている。また設計・製造の現場では、社外から図面を受け取る際、CADファイルではなくPDF や紙ベースにて行われていることもある。こうした中で、図面の情報を業務利用するためには内部の情報を一度何らかの形で読み取る必要がある。作業指示のために図面を送付する際も、メールでなくFAX で行っているという現場もまだ多く残っている。

 

▶熟練技術者頼みの過去図面検索から脱却せよ

 

もちろん設計製造の現場では、アナログな図面データであっても、その多くがPDF 化されており、紙で残していたとしても後からスキャナーで取り込めばPDF化できる。こうした図面データを何らかのシステムを用いて管理している企業も多いだろう。しかし、システムで管理を行うにしても、図面の内容を参照できるようにするには、PDF や手書きの図面からそこに記載されている部品や機構、文字情報を手入力で登録していく必要がある。しかし図面1 つだけでもその情報量は多く、手作業ですべてを登録していくのは現実的ではない。この結果としてシステムに十分な情報が集まらず、実際に多くの現場では必要な過去図面を探し出すのが難しい状況に陥っている。熟練技術者であれば過去の記憶からあたりをつけながら効率よく図面を見つけ出すことができるかもしれない。だが、これでは業務が個人のノウハウに依存して属人化してしまう。経験の浅い担当者は、過去の図面がうまく見つからなければ新たに図面を作成することになり、これでは似たような図面が増えて、ますます管理や検索ができなくなる悪循環に陥ってしまう。熟練技術者が自身の経験と記憶を駆使して効率的に必要な図面を検索してきた暗黙知を、いかに形式知として社内へ共有していけるかが重要だ。

 

▶PDF データを基にした図面検索に特化した仕組みを提供

 

 

 

こうした背景を踏まえ、設計業務の効率化を推進するには、以前作図した図面から必要な図面を素早く検索できる仕組みを整備することが重要だ。これを実現するソリューションとしてGlia Computing が提供するのが「LearningBook」だ。同ソリューションは、画像認識AI の技術を用いて、図面の中の部品記号や文字情報をシステムに読み込ませて認識させることで、それらの情報を部品の仕様情報と関連付けて管理することができる。社内に保存されている図面PDF に対して、文字や形状も検索対象とし、必要な図面を的確かつ素早く探し出して表示することが可能だ。

 

▶図面内の情報を変換・構造化し社内システムに連携活用が可能

 

図面を業務で利用する際、入力するデータが図面に記載されている仕様などの情報を確認し、手入力することがある。図面には記載されているものの、部門間で情報を共有する場合に、図面のバリエーションも多いため、図面内の情報を抽出することは難しい状況だ。LearningBook では、図面内の文字情報の抽出・構造化が可能であり、構造化したデータを社内システムに連携することが可能だ。これにより、全体最適を考えたシステム化へとつなげていけるだろう。

 

▶製造業の現場のためのLearningBook

 

 

LearningBook は、直感的で分かりやすいインターフェースになっており、IT の専門知識がなくとも素早く簡単にAI 学習が進められる仕組みを備えている。実際の検索イメージとして
は次のような2 つの方法がある。図面に含まれる文字情報や登録した仕様から名称やスペック等のキーワードを指定して検索する「仕様」による検索と、図面を参考として画像の構成が
類似した図面を過去の蓄積から検索してくる「類似」による検索である。なお、仕様による検索は図面に含む部品の点数など部品の検出機能で抽出した情報を利用することも可能である。
このように、LearningBook を活用すれば、似ている候補図面を絞り込んで、精査を行い必要な図面を見つけることが可能になる。
また、LearningBook の「変換して構造化」する技術を利用することで、図面内の文字情報を抽出し、その結果を変換して、社内システムに連携させることも可能となる。今までは、図面内の情報を社内システムなどに入力する際は、手作業で行わなければならないケースが多かったが、LearningBook を利用することで、一連の作業の効率化にもつなげることができるようになる。

LearningBook の変換結果は利用者が確認し、必要に応じて修正を加えることもでき、その修正結果を再学習のデータに用いることで、AI による変換精度を継続的に向上させることも可能だ。LearningBook であれば、今までの仕事を大きく変えることも、新しいスキルを現場の人に習得してもらう必要もなく、過去の資産を存分に生かしたデジタル化が行える。AI エンジンはデータを追加・再学習する機能を備えているため、使えば使うほど情報が探しやすくなっていく。まさに、日々業務を行う現場の人たちで、LearningBook を賢く育てていけるのである。

 

▶現場の利用者の「かゆいところに手が届く」ツール

 

LearningBook は、Glia Computing における製造業の顧客のために開発した図面検索システムが原点である。製造業の現場の思考や作業に適した使い勝手になっており、さらに業務に合わせてカスタマイズしやすい構成となっているのが最大の特色である。
製造業と一口にいっても、自動車、家電、医療機器など分野が多岐にわたり、かつそれぞれの企業で、設計や生産の事情や技術に個性や特色がある。その中でGlia Computing では、これまで多くの製造業の顧客と接してきた経験を活かしながら、現場の利用者の「かゆいところに手が届く」ツールとして今後もLearningBook をさらに進化させていく。

@engineer