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製品・技術

リチウムイオン電池の良品解析

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試験・分析・測定

リチウムイオン電池の良品解析

焼損の危険性を予測・評価し、安全性の高い電池の採用を支援

リチウムイオン電池の良品解析とは、焼損解析や電子部品の良品解析手法をベースとして、リチウムイオン電池の観察・測定を行うことで、電池に内在する欠陥や不具合構造を検出して、起こりうる不具合や、危険性を予測した判断基準と合わせて、電池の製造品質を確認する手法です。
さらに、リチウムイオン電池へ、過充電等による負荷を強制的に与える評価を行い、電池がどのような挙動(発火、焼損、延焼)を示すかを確認し、リチウムイオン電池の製品における延焼性のリスク確認などを検査します。これにより焼損事故を予防することに寄与いたします。

             

リチウムイオン電池の良品解析の様子

リチウムイオン電池の良品解析 検査項目

OKIエンジニアリングでは、電池に内在する欠陥や不具合構造を検出し、危険性を予測・評価するとともに、過充電や外部からの加熱をした際の焼損耐性の確認を行い、電池の品質を評価します。焼損耐性の確認については、電池単体での解析に加えて基板や実装部品を含む機器全体での解析も可能です。

検査メニューは以下のとおりです。

  1. 電気特性検査
    • 検査内容:開放電圧値、内部抵抗値、充放電容量
    • 検出される欠陥要因の例:抵抗異常、容量差
  2. 外観検査
    • 検査内容:安全弁の状態、端子TAB電極の溶接状態、捺印の状態
    • 検出される欠陥要因の例:傷、凹み、穴、臭気、捺印異常、基板実装不良
  3. 外形寸法検査
    • 検査内容:ケース外形寸法
    • 検出される欠陥要因の例:寸法異常、膨れ量、変形量
  4. 重量検査
    • 検査内容:電池重量、乾燥重量(オプション)
    • 検出される欠陥要因の例:重量ばらつき
  5. グロスリーク試験
    • 検査内容:気密性
    • 検出される欠陥要因の例:ピンホール、封止異常
  6. 透過X線検査
    • 検査内容:電池内部状態、電池巻き状態、異物等
    • 検出される欠陥要因の例:巻きずれ、異物混入
  7. X線CT検査
    • 検査内容:内部電極の状態、安全弁の状態
    • 検出される欠陥要因の例:巻き乱れ、巻きずれ、活物質の塗布ムラ、封止不良
  8. 分解検査
    • 検査内容:内部電極の状態、セパレータのかぶり量、活物質の塗布状態
    • 検出される欠陥要因の例:セパレータずれ、活物質剥離、活物質塗布ムラ、密着強度不足
  9. セパレータ(※1)構造検査
    • 検査内容:セパレータの構造
    • 検出される欠陥要因の例:セラミックコートの有無
  10. 発火・焼損耐性、延焼性の評価
    • 検査内容:電池単体、電池搭載製品
    • 検出される欠陥要因の例:発煙・発火の有無、発火前後の状態

(※1):セパレータ

     正極と負極間を隔離して内部短絡を防ぐ役割がある。セパレータの構造による焼損

     予防技術(セラミックコートの有無)が有効である。

 

リチウムイオン電池の良品解析 事例

円筒型リチウムイオン電池(18650)の3種について良品解析を実施しました。

電池A(電池単体)        : 3.7V, 3200mAh, 11.84Wh
電池B(首掛け扇風機内蔵電池): 3.7V, 2000mAh, 7.4Wh
電池C(電池単体)        : 3.7V, 4200mAh, 15.54Wh
当社で実施した検査結果の一部を紹介します。

検査メニュー : 1. 電気特性検査 事例

バッテリーインピーダンスメーター、充放電測定装置を用いて、±電極間の内部抵抗値、開放電圧値、充放電容量を測定しました。各電池ともスペック値には達していませんが、電池Cは放電時間(容量値)が著しく低いことがわかります。

       放電測定結果               放電容量値

 

 

検査メニュー : 9. セパレータ構造検査 事例

イオンミリング装置、走査型電子顕微鏡(SEM)、エネルギー分散型X線分析装置(SEM-EDX)を用いて、セパレータの構造(セラミックコートの有無)を検査しました。電池Bはセラミックコートがないため、セパレータの耐性が低いと懸念されます。

      電池Aの検査結果          電池Bの検査結果

 

解析結果のまとめ

電池A、電池B、電池Cの良品解析を行った結果、当社では各電池を以下のように評価しました。

電池A  外観状態、内部とも欠陥がなく、製造品質は良好であった。
      過充電での焼損はなく、外部加熱でも焼損発生温度が約200度と高く、電池の焼損

      耐性は高かった。

 

池B  外部電極の錆や活物質の剥離等、品質に問題点が確認された。

          セパレータはセラミックコートされていなかった。
              過充電での焼損が確認されたことから、電池の焼損耐性は低かった。
              焼損時の筐体は破壊が激しく、筐体樹脂ならびに内蔵基板への延焼が確認された。
              筐体の強化、難燃化対策が望まれる。

 

池C  放電時間(容量値)が極端に低いこと、電池重量が軽いこと、内部電極の巻き数が 

      少ないこと等から、規格不良品である可能性が高いと考えられる。

 

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