加工助剤について

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • @engineer記事クリップに登録
 / 2013年06月12日 / 

加工助剤の定義

 物理的な作用(例えば、滑性)と化学的な作用(例えば、化学しゃく解)をもつ加工助剤の定義を下記に掲げる。

 

   添加量が相対的に少なく、被添加物質の物理的な性質に大きな影響を与えずに、

   加工特性を改善する目的で使用される材料 

 

加工助剤の機能

 まず、加工助剤または加工促進剤と呼ばれる製品に対してなにを期待するのかという問いかけに応える必要があろう。下表から分かるように、加工助剤の機能範囲は広く、かつゴム加工の長い工程全体に対応できることである。

 

工程 作用 効果
混合工程

配合生地粘度(腰

均質化

フィラー充填

粘着

粘度低減

相容化

混合時間短縮/分散促進

メタルリリース(はく離)

中間工程

押出

カレンダー

アセンブリ

流動

メタルリリース(はく離)

タック

加硫工程

圧縮成形

トランスファー成形

インジェクション成形 連続加硫

流動

メタルリリース(はく離)

対型汚染

対型洗浄

 

 オープンミルないしはインターナルミキサーを用いて混合する工程での要件は、各種ポリマー原料のブレンド均質化と フィラーその他の配合剤のより迅速な混入・分散がはかられねばならないことである。配合物のタック調整も場合よって必要となる。 さらに、機械に対するゴム生地の過剰な付着や逆にバッギングが起こることは避けねばならない。

 混合時間の短縮は必要である。この場合低減されるべき配合物粘度はマイルドであるがエネルギー効率のよい、低い温度 での混合が望まれる。各配合剤の均一分配と最適分散の必要性に加えてスコーチの影響は最小に抑えることが必要である。混合工程では、 必要な機能性に応じて、物理的および化学的ペプタイザ(しゃく解剤)、ホモジテイザ(均質化剤)、分散剤と云った製品に需要がある。

  半製品を賦形化する川下の工程では流動性のよいゴム配合生地が要求される。プロファイル生地の押出しは迅速かつ容易 さらに均一でなければならない。さらに品質上エッジ出しが要求されると同時に、表面肌、形崩れ抵抗には気をつけなければならない。 このためには押出温度とダイスウェルをできるだけ低く抑えるのが有効であることがわかっている。               

 他方、カレンダーエ程の場合、表面肌、縮み、気抱膨れ(ブリスター)の欠陥が問題となり、アセンブリやプライ工程では タックが問題となる。そこで滑剤やタッキファイヤの製品が川下対策して利用される。これらの材料はゴム生地のレオロジー的な性質に 作用するのは云うまでもない。

 加硫工程、特にトランスファー成形やインジェクション成形工程では生地の迅速かつ均一な型充填には流動性が問題である と同時に、ブリスターの発生は許されない。成形時の最終的な要求は、ゴム製品の脱型操作(リリース)が容易であること、型汚れを防ぐ ことにあり生産性の鍵を握る。

 連続加硫の場合、プロファイルやチューブ押出物の形崩れには注意を要する。表面光沢、低フリクション、ブロッキング防止 など特別な表面状態の要求は添加剤によっては有効である。

 シル+ザイラッハ”ストラクトール”社の長年の研究開発から、加硫アクチベータ(活性化剤)の機能をもつ材料が見出だされた ことはすでに知られている。それは特別な脂肪酸塩から成るもので加硫密度およびリバージョン(加硫戻り)抵抗を改良する。同時にゴム生地の 流動性を高めスコーチ安全性(遅延効果)をもたらす意味で加工性の向上にも寄与する。

 加工助剤に多くの機能が要求されてきたことは、上市されている製品の数・種類が増加の一途をたどっている様子から明らか である。なお、可塑剤とサブについては、これらも加工助剤に含むべきなのであるが、過去の経緯から別の範疇に分類されている。

 

加工助剤の分類

 加工助剤の数はかなり多いので、できるだけ明瞭な分類が必要である。これまで溶解度パラメータ、融点、ガラス転移温度の 影響などの種々な基準に基づいて整理する方向に試みられようとしたが、ゴム配合物中での加工助剤の性質や影響に関する知見はあったとしても きわめて希薄である。従って、配合技術者に役立つものはほとんどないと云ってもよい。比較的に役に立ちそうな分類として、つぎのような 化学構造による分類がある。

 

グループ
炭化水素化合物 ミネラルオイル、ペトロラタム、パラフィンワックス、石油樹脂
脂肪酸誘導体 脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪アルコール、金属石けん、脂肪酸アミド
合成樹脂 フェノール樹脂
低分子量ポリマー ポリエチレン、ポリブデン
有機チオ化合物 ペプタイザ、再生化剤

 

 この分類は物質のクラス分けであるが、配合技術者にとって主たる作用効果や材料選択にもっと役立つ内容はこの表からは読み取れない。そこで、より意義深いと思われる作用別分類を下表に掲げる。

 

作   用
しゃく解 2,2'-ジベンズアミドジフェニルジスルフィド、ペンタクロロオチフェノール、亜鉛石けん
分散 脂防酸エステル、金属石けん、脂肪族アルコール
流動 金属石けん、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、脂肪酸
均質化 樹脂ブレンド
タック付与 炭化水素樹脂、フェノール樹脂
高硬度化 ハイステレン樹脂、フェノール樹脂、トランスポリオクテナマ
リリース効果 オルガノシロキサン、脂肪酸エステル、金属石けん、脂肪酸アミド

  

 上表では、どの物質がどんな作用をするか見るのに便利である。物質の幾つかは、例えば脂肪酸エステルなどは滑剤と分散剤として互いに補足し合う多重効果が期待できる。このような場合を含めて、上記分類からは偏りなく概観でき、 説明も容易になる。

@engineer