プラスチック中に可塑剤として添加されるフタル酸エステルは、内分泌攪乱物質として海外、日本国内でも法規制の対象となっています。主な規制製品として、子供用玩具や育児製品、食品包装品等が挙げられますが、2019年7月22日より改正RoHS指令(RoHS2.0)に伴い、RoHS2.0禁止物質の10物質中、以下のフタル酸エステル類4物質が新たに規制対象として追加されました。
フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP)
フタル酸ブチルベンジル(BBP)
フタル酸ジブチル(DBP)
フタル酸ジイソブチル(DIBP)
現状、すでにGC-MS法によってppmオーダーの定性定量分析が可能ですが、試料の前処理や準備・メンテナンス等にコストと時間を要し、効率化を図りたいのが実情です。そこでGC-MSによる分析の前段のスクリーニング用途への適用が期待されているのがFTIRです。ATR法で、製品をPVC(ポリ塩化ビニル)に限定した評価も検討されていますが、規制値の0.1 wt%の検出は困難です。また、一般的なATR法の感度限界から分析対象物(今回はフタル酸エステル)を樹脂と樹脂に含まれる添加剤から分離して測定する方法が必要です。検出感度を向上させ、PVC以外の樹脂に対応するには、可塑剤と樹脂の赤外スペクトルが重畳しない必要があります。
当ページでダウンロードできるアプリケーションノートでは、FTIRを用いて有機溶媒による溶出法を適用したフタル酸エステル類の検出例を紹介しています。この方法を用いると20㎎程度の少量サンプルで、0.1 wt%フタル酸エステル類や他種の可塑剤の検出を極めて短時間で行うこと可能です。当アプリケーションノートで紹介する分析の目的は、フタル酸エステル類の存在を確認することであり、フタル酸エステル種の種類や規制の対象・非対象であるかは分析対象としていません。しかしながら、この溶出法により微量な可塑剤を濃縮・検出することができることからゴムや成型樹脂にフタル酸エステル類が含まれているか否かを迅速かつ簡単に、そして低コストで行える可能性を示しています。
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