HME(溶融混練法)とは
私たちが日常的に食べるものは、さまざまな材料を混ぜたりこねたりすることで完成するものが多くあります。例えば、あんこは豆と砂糖や塩などを焦げないように、良い味や食感が得られるように、条件を考慮しながら混ぜて作られます。パンも小麦粉とベーキングパウダー、砂糖や塩、卵、そして水を調整しながら絶妙な条件でその配分を見ながら温度や速度を調整して混ぜ合わせて生地を作ります。あめ(キャンディー)も同じようにして、良い味や色、理想的な口の中で溶けるスピードなどを考慮しながら作られています。食品をこのようにして作るために、細長いシリンダーの中に材料をいれて、スクリューでかき混ぜながら、温度をかけて練り上げていく方法があります。
この方法が、HME(ホットメルトエクストルージョン=溶融混錬法)と呼ばれる方法です。この時、材料を投入する順序や、スクリューの形や速度、スクリューとシリンダー(バレル)の隙間、その環境温度などを微妙に管理しながら、最高な状態に仕上げていきます。
製剤技術としてのHME
HMEは画期的な製剤技術として注目されています。その理由を説明します。薬(原薬)には、その効き目が良く分かっていても、人間の体には吸収されにくいものが沢山あります。例えば、コンドロイチン、グルコサミン、コエンザイムQ10といった物質も全て水に溶けにくいものです。このような薬は沢山とっても体に吸収されず、そのごく一部だけが吸収されるということになってしまうのです。また、薬は量を多く摂取すると、副作用が起こることもあります。
このような薬を水に溶けやすくすることができれば、少量で大きな効果を得られ(=バイオアベイラビリティの改善)、副作用などの問題も解決するのです。ポリマーと薬をうまく溶け込ませて飴状(非晶質)にすることで、水に溶けやすい体内への吸収性の高い薬が完成します。そして、このポリマーと薬をうまく混ぜて溶け込ませた状態のものを固体分散体と呼んでいるのです。
HMEの利点
HMEでは有機溶剤を使用せずに固体分散体を作ることができるため、製造工程が環境に優しいだけでなく、製造した薬に有機溶剤が残留して人体に悪影響を与える問題がなくなる、という大きな利点があります。また、HMEは連続的な生産プロセスであり、溶剤を使用する必要がないため、環境に優しい技術です。また、製造条件が他の方法と比較して少なく設定できるため、間違えが起こりにくく、同じ設備を利用すれば同じ条件で同じ製品が製造できます。これは、薬品の製造において特に重要で、世界中で同じ条件で製造が可能です。
このように、従来のスプレードライ(噴霧乾燥)法と比較するとHMEの導入はトータルでの製造コストを大幅に下げられる可能性を提供します。
HMEの応用
HMEは口腔内崩壊フィルム(ODF)などの製薬製剤にも応用されています。ODFは、正確な用量の医薬品有効成分を安全に投与できる点で有効性が高く、バイオアベイラビリティの改善や初回通過効果の回避が期待できます。さらに、HMEは経皮、経粘膜または皮下薬剤などのデリバリーシステムを製造することもでき、既存の顆粒またはタブレット錠剤の薬物放出プロファイルを改善することも可能です。
当社の豊富なエクストルーダーラインアップ
HMEの技術的背景
HMEは、二軸スクリューエクストルーダーを使用して材料を混合・混練します。ポリマーが溶融し、すべての成分が混合され、練り込まれることで、強力な配合が行われます。押出物の形状は、最後に配置されるダイによって決定されます。
当社の二軸エクストルーダーは多くの製薬関連企業における導入実績を持ち、豊富な製品ラインアップにより、卓上型による小スケールでの処方検討から、製造に至るまで広範囲に対応し、その拡張性の高さと使いやすさの点において高い評価を得ています。
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