【 日本版WETとは? 】
『WET( Whole Effluent Toxicity:全排水毒性 )試験』は、工場排水等を生態系へ排出する際の管理手法としてアメリカで確立されました。『排水基準』のような個々の有害物質を規制するやり方とは異なり、種々の物質を含んだ排水そのものの毒性を生物応答によって評価する手法です。他の諸外国でも個別物質規制に加えて導入が進められており、日本国内においても導入が検討されています。
日本版WETは、2010年から環境省・国立環境研究所主導のもとに試験法の確立をはじめとして、国としての制度面をどのように定めるか、運用面をどのように整備していくか、について検討が進められています。
日本版WETの課題として、以下のものが挙げられます。
・日本における他の水質管理基準との同調(WET単体では評価しきれない)
・被験生物を日本で入手しやすいものにカスタマイズする必要がある
・試験機関の確保
WET試験が検討、導入されるに至ったきっかけは、人間の事業活動に伴い環境水中に排出される様々な化学物質の複合作用により、生物群、あるいは生態系へ影響(毒性)が及ぼされていないかを効率的、具体的な手法で評価する必要があると考えられたことに始まります。
つまり、各地域の環境条件の多様性(生物叢、水温など)を考慮しつつ、実態を正しく反映することのできる包括的なテストガイドラインを策定する必要があるのです。
【 具体的な試験法 】
これまでの検討によって、以下のものが国内の標準的な試験法として確立されています。
ムレミカヅキモ( Pseudokirchneriella subcapitata )を用いた藻類生長阻害試験
排水等の被験液に本種を曝露し、増殖に影響が出ない最高濃度(最大無影響濃度:NOEC)から評価する
※ アメリカのテストガイドラインにも規定された種を使用
ニセネコゼミジンコ( Ceriodaphnia dubia )を用いた繁殖試験
排水等の被験液に本種の成熟雌個体を曝露し、産仔数あるいは親個体の斃死率からNOECを算出し、評価する
※ アメリカのテストガイドラインにも規定された種を使用
ゼブラフィッシュ( Danio rerio )胚・仔魚を用いた急性毒性試験
排水等の被験液に本種の受精卵を暴露後に継続飼育した際の斃死率、異常個体率等からNOECを算出し、評価する
※ アメリカのテストガイドラインでは導入されていない種を使用
※ 本種のかわりにヒメダカ( Oryzias latipes )を用いる方法も検討されている
国内で先行して行われた事例でも上記3種を用いた試験が実施されており、実施した企業のCSRレポートや環境報告書等にその結果が示されています。
【 課題 】
上述のように、導入に向けて実際的な試験法は確立しつつありますが、現時点では下記のような課題が存在します。
・試験機関の不足
・基準値等の基礎情報の不足
・試験運用に伴う国としての関わり方等
・海水生物群に対する影響評価法が未整備
公定法の要求を満たす試験実施のためには、まずは上記1~3項目をクリアしなければいけませんが、私どもとしてはアメリカで確立されたテストガイドラインと同基準での議論を可能とするためにも、4つ目の課題である『海水生物に対するWET試験』が必須となると考えております。
うみの株式会社では海水版WET試験を導入しています
弊社では、アメリカのテストガイドラインをベースに策定した海水生物試験を導入しております。日本版WET試験のみならず、弊社の海水版WET試験をご利用いただくことにより、他社に先駆けて環境に配慮した先進企業であることの証明としてお役立ていただけるのではないかと考えております。
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