【令和8年4月施行】労働安全衛生法の改正で、個人事業者等も保護対象へ
2025年、労働安全衛生法等が改正されましたが、2026年4月(一部内容を除く)にも、労働安全衛生法の施行(改正)が予定されています。今回の改正では、従来「労働者」を中心に据えていた安全衛生対策について、個人事業者等も対象に取り込み、災害防止を図ることが大きな柱の一つとなっています。
このページでは、改正内容のうち「個人事業者等に対する安全衛生対策の推進」について解説します。
どういった状況か
背景にあるのは、令和3年5月の建設アスベスト訴訟における最高裁判決です。この判決において、労働安全衛生法第22条(健康障害防止措置)は、労働者だけでなく「同じ場所で働く労働者でない者」も保護する趣旨の判断が示されました。
これを受け、同じ場所で働く労働者の災害防止のため、個人事業者等を労働安全衛生法による保護対象および義務の主体として明確に位置づける見直しが行われました。
必要なアクション
この改正により、注文者(建設業におけるゼネコン等を含む)および個人事業者等自身に対し、主に以下の措置が義務付けられます。
1. 注文者(建設業におけるゼネコン等)が講じるべき措置の義務付け
建設業、造船業、製造業の注文者には、同一場所で行われる混在作業による労働災害を防止するため、作業間の連絡調整等の統括管理が義務付けられています。今回の改正により、この統括管理の対象に、労働者だけでなく「個人事業者等を含む作業従事者」が追加する 等の見直しが行われます。
これにより、個人事業者等が混在する作業場所においても、注文者による連絡調整が必要となります。
2. 個人事業者等自身が講じるべき措置の義務付け
個人事業者等自身にも、災害防止のための措置が求められます。
- 機械等の安全確保:構造規格や安全装置を具備しない機械等の使用が禁止されます。
- 定期自主検査:特定の機械等に対し、定期自主検査の実施が求められます。
- 安全衛生教育:危険・有害な業務に就く際の安全衛生教育の受講などが求められます。
3. 業務上災害の報告
個人事業者等を含む作業従事者の業務上災害について、労働基準監督署に報告する仕組みが整備されます。
※個人事業者に作業を請け負わせる「事業者」に対する保護措置の義務づけは省令改正により対応済み。
これらの改正法は、令和8年4月1日からの施行が予定されています(一部規定を除く)。関係する事業者は、新たなルールに対応できるよう準備を進める必要があります。
関連するリンク
- この記事は、厚生労働省「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)の概要」を基に制作しています。
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