【令和8年4月施行】SDS通知の厳格化と個人ばく露測定の適正化。化学物質による健康障害防止対策の推進
労働安全衛生法等の改正(令和7年法律第33号)により、化学物質管理に関する規制が見直されました。化学物質の「自律的な管理」への転換が進む中、情報の伝達(SDS)の確実な履行や、ばく露状況の正確な把握がより一層重要となります。
このページでは、改正内容のうち「化学物質による健康障害防止対策等の推進」について解説します。
どういった状況か
化学物質管理については、化学物質ごとの個別具体的な規制から、事業者等による「自律的な管理」を基軸とする規制へと安衛法体系の抜本的な見直しが行われています。これに伴い、令和8年4月には、危険性・有害性情報の表示(ラベル)や通知(SDS)、リスクアセスメントの実施義務の対象が、危険性・有害性がある全ての化学物質(約2,900物質)へと拡大される予定です。
こうした状況を踏まえ、化学物質の譲渡・提供時における情報伝達の確実な履行や、労働者のばく露状況を正確に把握するための測定精度の担保が必要とされています。
必要なアクション
今回の改正により、主に以下の3点について見直しが行われます。
1. SDS(安全データシート)通知制度の履行確保
化学物質の譲渡・提供時における危険有害性情報の通知(SDS交付等)を確実に行うため、以下の措置が講じられます。
- 罰則の新設:通知義務違反に対する罰則が新たに設けられます。
- 変更時の再通知の義務化:通知事項に変更があった場合の再通知について、現行の努力義務から義務化されます。
2. 営業秘密と情報通知のバランスの見直し
化学物質の成分名に企業の営業秘密情報が含まれる場合の対応について、以下のルールが定められます。
- 代替名の通知容認:SDSについて、EU等の仕組みを参考に、有害性が相対的に低い化学物質に限り、成分名について代替化学名等での通知が認められます。 ただし、「非開示とできるのは成分名のみであり、人体に及ぼす作用、講ずべき応急の措置等については非開示を認めない」とされています。
- 医療上の必要性による開示:代替名の通知を行った場合であっても、医師が診断及び治療のために成分名の開示を求めた場合は、直ちに開示しなければなりません。
3. 個人ばく露測定の適正な実施
危険有害な化学物質を取り扱う作業場において、労働者のばく露程度を把握するために行う「個人ばく露測定」について、精度を担保するための措置が講じられます。
- 法律上の位置付けの明確化:作業環境測定の一つとして位置付けられます。
- 有資格者による実施:作業環境測定士等の有資格者により実施しなければならないこととされます。
関連するリンク
- この記事は、厚生労働省「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)の概要」を基に制作しています。
【令和8年4月改正施行】
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