鉄道の安全と利便性を守る鉄道総合技術研究所
3次元測定アームでレール測定の精度を向上
- ユーザー:公益財団法人 鉄道総合技術研究所
- 導入機材:FARO Quantum Max ScanArm
- ソフトウェア:OQTON Geomagic Design X
- 用途:
- 鉄道のレールのメンテナンスに関わる調査や研究などがメイン業務の軌道技術研究部レールメンテナンス研究室にて、レールの腐食によるレール断面減少の状態を測定し、数値化。
FARO測定器導入以前の課題
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目視や定規では正確な数値がわからない。
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レール底部の腐食量を超音波探傷検査で測定する場合には、レールの中心部しか測定できない。
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光学式3Dスキャナーでレール全面をスキャンしようとすると、大変な時間と手間がかかる。
Quantum Max ScanArm導入理由
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スキャンによりレール全面の状態を把握でき、正確な数値で確認できる。
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光学式に比べると、測定時間が短く手間も少ない。
導入の効果
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正確な値がわかり精度が大幅に向上。
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短い作業時間で測定できるので、より多くのサンプルに対して試験を実施できるようになった。
公益財団法人鉄道総合技術研究所(以下、鉄道総研)は、「革新的な技術を創出し、鉄道の発展と豊かな社会の実現に貢献」するというビジョンを掲げ、鉄道の安全、技術向上のための研究活動を行っている機関です。軌道技術研究部は、鉄道固有技術である軌道分野を対象に、専門的な研究開発を行う部署で、その中のレールメンテナンス研究室ではレールの維持管理全般に関する技術開発のための研究が行われています。
レール全体の数値把握の難しさ
鉄道総研 軌道技術研究部 レールメンテナンス研究室では、FAROの3次元測定器導入前、目視や定規、超音波探傷器、光学式3Dスキャナーなどを利用して腐食したレールの状態を確認していました。しかし、精度や作業の手間などに課題がありました。
目視や定規では、だいたいの状態はわかりますが、どのくらい断面減少しているかなどの正確な数値がわかりません。また、レールの腐食状態を確認するために、超音波探傷検査によってレール底部の腐食量を測定しています。しかしながら、このような検査を行う際には、一般的に超音波をレール頭頂面から入力するため、レールの中心部しか確認できず、レール底部の側面の状況が把握できません。中心部の状態しか把握できないため、それが本当にレール底部の腐食の状態を表す正しい値なのかがわかりませんでした。光学式3Dスキャナーも使用して底面を測っていましたが、レール全面をスキャンしようとすると、大変な時間と手間がかかります。研究を担う水谷淳氏は、何本もレールを検査するのは難しいと思っていました。
正確な測定により適切なレール交換時期を提案
水谷氏の所属する軌道技術研究部レールメンテナンス研究室では、レールの維持管理全般に関する技術開発を担当しており、その一環としてレールの腐食対策に取り組んでいます。交換基準に達しているレールを所に持ち帰り、どのくらい断面減少しているかを測り、応力解析を行います。レールの腐食はトンネル内や踏切で多く発生しますが、レールの下部がより減ってしまいます。研究部では、レール全面の状態をスキャンし数値で確認するため、2024年2月FAROの3次元測定アーム「Quantum Max ScanArm」を導入しました。
導入について水谷氏は、正確な値が把握でき精度が大幅に向上したのが大きなメリットとしたうえで、次のように説明しています。「レール交換の目安は通過トン数(どのくらいの列車が通過したかによる荷重)、車輪との接触によるレール頭部の摩耗、キズ、腐食などで決まりますが、腐食によるレールの断面減少に関する交換時期の根拠ははっきり定められているわけではありません。3次元測定器を使って正確な測定をすることで、今の交換基準が適切なのか、もっと伸ばせたのか、などの調査を行います。経験値ではなく数値で表し、応力解析と組み合わせて適切な交換基準を提案したいと考えています。」
FARO Quantum Max ScanArmで、レール側面をスキャン。持ち運び可能なポータブル3次元測定アームのため、「将来は現場に持ち込んで測定することができないかと考えています」(水谷氏)
鉄道の安全と安定輸送を守る
「鉄道総研は、列車の安全や安定した輸送に寄与する研究機関です。中でも軌道は鉄道システムに必要不可欠な技術であり、鉄道に特有の特殊な構造です。軌道技術研究部では軌道について専門的に研究し、鉄道業界の安全を守ることを視野に日々奮闘しています。安全性の向上、レール検査の省力化、レール寿命延長による低コスト化などが、乗客の安全と利便性につながり、事故が少なくなれば定時性の向上につながります。私たちの研究で鉄道事業者や乗客に役立つ成果を提供できるのです。鉄道関係者だけでなく、日々電車を利用する方にもこの取り組みを知っていただけたら嬉しいです」と水谷氏はインタビューを締めくくりました。
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