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事例

ポータブル吸引ポンプ雰囲気中のガス成分の採取

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自動車 試験・分析・測定 家電・AV

■概要

雰囲気中のガス成分の採取において従来はパッシブガスチューブやTenax® チューブを静置し、吸着させて採取を行っていましたが、ポータブル吸引ポンプを用いることでより効率よくガス成分を採取できるようになりました。
雰囲気中ガスの吸着に使用される標準的なポンプはコンセント接続が必要なため、採取できる場所が限られますが、電池式のポータブル吸引ポンプを使用することで場所を選ばず採取することができます。
ポータブルポンプ及びTenax®チューブは貸出可能です。
採取の際は採取方法の資料を添えて貸出いたします。

 

■装置仕様

・装置名:光明理化学工業 エアーサンプリングポンプ ASP-1200
・ポンプ:ダイヤフラム方式
・寸法:145(W)×99(H)×54(D)mm(突起部分は含まない)
・電源:単三形アルカリ乾電池、単三形ニッケル水素充電池、

 単三形リチウム乾電池いずれか4本AC電源
※貸出可能

  

分析項目

・捕集したガス成分の分析
・定量分析も可能(D8トルエン換算)

 

測定装置

・装置名:島津製作所製 TD-GC/MS TD部:TD-30 GC/MS部:GCMS-QP2020NX
・TD加熱温度:350℃
・常用使用カラム:Agilent社製 DB-1 0.25mm ×60m
・常用使用Tenax®チューブ:GLサイエンス社製 Tenax® TA60/80 150M

 

標準的な吸引ポンプとポータブル吸引ポンプの性能の比較

 

雰囲気中ガスの吸着に使用される標準的な吸引ポンプとポータブル吸引ポンプの性能差を比較しました。

 

 

ピーク面積値より、ポータブル吸引ポンプは標準的な吸引ポンプの約98%の性能でした。

ポータブル吸引ポンプでも雰囲気ガス中の成分を十分採取できることがわかりました。

   

ポータブル吸引ポンプによる大気採取の様子

Tenax®チューブを写真のようにポータブル吸引ポンプに取り付け、ポンプを動作させることによりTenax®チューブに大気中の成分を吸着させます。

 

 

測定例

1.本社玄関の空気成分分析

 

弊社は7月28日に東証グロース市場に上場しました。
その際、祝花をたくさん頂戴しました。
お花の良い香りが漂っていたので「香りの成分が検出されるのでは?」と考え、ポータブルポンプで空気を採取してみました。

本館の玄関に設置したお花です(一部)。
たくさんのお花を頂戴しまして、誠にありがとうございました。

 

 

上図のようなTICスペクトルが得られました。
玄関設置の消毒用アルコール由来と思われるエタノールをはじめ、実験室から流れてくる成分、壁紙から放出されていると推定される成分が検出されました。(D8トルエンは内標物質として添加しているものです。
既知濃度の内標物質を加えることで検出された各成分の濃度を計算することができます。)
花の香りの成分の候補となる物質は1-メチル-4-(1-メチルエチル)シクロヘキサノールもしくはDL-メントールですが、はっきりと明言できず…。
香りの成分があまり検出されなかった原因としては、
1)香りの成分は主張が強いため微量でも匂いを感じることができるため、匂いが漂っていても実際に大気中に漂っている成分はごく微量でGC/MSで検出できる下限値を下回っていた。
2)香りの成分は分子量が大きいものが多い。GC/MSの装置内を通り抜けるのに時間がかかるため、標準の分析時間では検出されなかった。
と考えられます。

 

2.香水の香り成分分析

玄関の大気からは香りの成分が検出されなかったため、もう少し香りの分析を試そうと香水を噴霧してその大気を採取して測定しました。
柑橘系の香りがする香水で、含まれている精油はオレンジ、ベルガモット、レモン、ラベンダー、ネロリ、アンバー、アンブレットなど。
これらの精油由来の成分が検出されれば成功です。
周囲の大気由来の成分と区別するために噴霧前の大気も採取し同条件で測定して比較した結果が以下の図です。

 

 

香水噴霧後は噴霧前には見られなかったピークが検出されました。
このピークを解析してみると、まず-OH基のついたアルコール類がいくつか見られました。
香水は精油などの香料を組み合わせて作られますが、これらの香料を溶かすための溶媒としてこのようなアルコール類が使用されているようです。
そして今回調べたかった香料の成分もしっかりと検出されました。
まずD-リモネン。こちらはオレンジやレモンなどの皮から得られる精油などに含まれている成分です。
リナロールはラベンダーやベルガモットから抽出した精油に含まれ、3-カレンはアカマツなどから採れる樹液等に含まれる成分でアンバー由来と推定されます。
アンブレットの香りの成分であるアンブレットリドなど検出されなかった成分もあり、やはり分子量やカラムとの相互作用等の影響もあるようです。
分子量やカラムとの相性の影響もありますが、香水に含まれる香りの成分も検出されることがわかりました。

 

3.2つの実験室の大気比

弊社内に複数ある実験室のうち、実装実験を行う部屋と開封作業を行う部屋の空気をそれぞれ採取し、比較しました。
これら2つの部屋で使用している薬品は全く異なっています。違いがしっかり出れば成功です。

 

 

 上図の通り、しっかりと違いが出ました。
実装実験の部屋からはアセトンやIPA、酢酸エチル等の有機溶剤が、開封作業の部屋からはエチルベンゼンやキシレンなどベンゼン環を持つ物質が複数検出されました。
部屋ごとの大気中の成分の違いを調べたい場合も対応可能です。

 

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